

せっかく登録や反響をくれたお客様に、案内が届いていない。
人材紹介・派遣、不動産、スクール、通販など、個人のお客様に連絡する業種でマーケティングを担当している方なら、こんな状況に心当たりがあるはずです。
- 登録者は数千人、数万人いるのに、メールアドレスがない人には案内を届ける手段がない
- LINEで友だちになった人が、顧客管理システム(CRM)の誰なのか分からない
- メールとLINEの両方で、同じ人に同じ案内が2通届く
- 電話番号はあるのに、形式がそろっておらずSMSの宛先が作れない
どれも「チャネルが足りない」のではありません。「1人のお客様に、どのチャネルなら届くのか」が整理されていないことから起きています。
この記事では、メール・LINE・SMSを組み合わせて、1人でも多くのお客様に届けるための設計を解説します。人材派遣会社と不動産会社の現場の例もあわせて紹介します。
- 結論:リーチは「チャネルの数」ではなく「1人にどれで届くか」で決まる
- メール・LINE・SMSの特徴を比較する
- 現場で起きていること:人材派遣会社と不動産会社の例
- まず「誰に、どれで届くか」を棚卸しする
- 同じ人に2通届く問題は「CRMのID」で名寄せする
結論:リーチは「チャネルの数」ではなく「1人にどれで届くか」で決まる
近道は、チャネルを増やすことではありません。
1人のお客様にどのチャネルで届くのかを、CRMの1つのIDにまとめること。そのうえで、目的ごとに主役のチャネルを決め、届かなかった人にだけ次のチャネルで送ります。
| チャネルを足していく運用 | 1人1つのIDで束ねる運用 | |
|---|---|---|
| 届く人の把握 | チャネルごとの登録者数しか分からない | 「この人にはどれで届くか」が1人ずつ分かる |
| 重複 | 同じ人に複数チャネルで同じ案内が届く | 1人に1回だけ届ける |
| 届かない人 | どのチャネルでも届いていない人が見えない | 届かない人を特定し、連絡先を取りにいける |
メール・LINE・SMSの特徴を比較する

3つのチャネルは、得意なことが違います。料金は2026年10月18日に各社の公式ページで確認した内容です。
| 比較の軸 | メール | LINE(LINE公式アカウント) | SMS(ショートメッセージ) |
|---|---|---|---|
| 届けるのに必要なもの | メールアドレス | 友だち追加 | 携帯電話番号 |
| 向いている内容 | 求人や物件の一覧など、情報量の多い案内 | 短いお知らせ、リマインド | 重要な連絡、メールやLINEで届かない人への案内 |
| 届き方の特徴 | 迷惑メールに入ることがある。開封の判定はぶれやすい | ブロックされると届かない。個人ごとの開封は取れない | 電話番号があれば届く。開封は測れない |
| 費用 | 配信ツールの料金による | 月額プランごとに無料通数が決まっている | 送るたびにかかる。長文ほど高い |
| 同意と停止 | 特定電子メール法に沿って同意と受信拒否の表示 | 友だち追加が入口。ブロックで止まる | 特定電子メール法の対象。メールと同じ対応が必要 |
メール:情報量で勝負できる、唯一のチャネル
求人なら勤務地・給与・仕事内容、物件なら価格・間取り・写真を添えて5件並べる。こうした案内を無理なく送れるのはメールだけです。
ただし、届くかどうかは送信側の設定にも左右されます。
Gmailは、1日5,000件以上をGmail宛てに送る送信者に、SPF・DKIM・DMARCの設定、ワンクリックでの登録解除、迷惑メール率0.3%未満などを求めています(出典:Google「メール送信者のガイドライン」)。登録者が数万人いる会社は、すぐにこの対象になります。
LINE:気づかれやすく、接点が続く
LINEの国内月間利用者数は、2025年12月時点で1億を超えました(出典:LINEヤフー 2026年1月29日発表)。
ふだん使うアプリに届くので、メールを見ない人にも気づかれやすい。返信やボタンでのやりとりも続きます。ただし届くのは友だち追加した人だけで、ブロックされると届きません。
料金プランは次のとおりです(出典:LINEヤフー for Business「料金プラン」、2026年10月18日確認)。
| プラン | 月額固定費(税別) | 無料メッセージ通数 | 追加メッセージ |
|---|---|---|---|
| コミュニケーションプラン | 0円 | 200通 | 不可 |
| ライトプラン | 5,000円 | 5,000通 | 不可 |
| スタンダードプラン | 15,000円 | 30,000通 | 1通あたり約3円〜(税別) |
通数は「送った回数×送った友だちの数」です。友だちが1万人なら、1回の一斉配信で1万通。登録者の多い会社では、何回送るかがそのまま費用に効きます。
SMS:電話番号さえあれば届く
SMSの強みは、届く範囲の広さです。メールアドレスがない人、LINEの友だちでない人にも、携帯電話番号があれば届きます。
一方で、送るたびに費用がかかります。
NTTドコモの個人向けSMSは、全角70文字までが1通3円(税込3.3円)。文字数に応じて最大670文字・30円(税込33円)まで上がります(出典:NTTドコモ「SMS ご利用料金」)。法人向けの配信サービスは料金体系が異なりますが、「1通ごとにかかる」「長文は割高」は同じです。
用件を短く絞り、詳しい内容はリンク先に置く。これが基本の型です。
現場で起きていること:人材派遣会社と不動産会社の例
業種の違う2つの現場を見てみます(いずれも実在の会社の例ですが、社名や固有の情報は伏せています)。
例1:チャネルは3つあるのに、誰に届いているか分からない人材派遣会社
施工管理などの求人を登録者に届け、応募や面談につなげている会社です。メールマガジンに加えて、LINEとSMSも使っていました。
それでも、悩みは「チャネルが足りない」ではありませんでした。

- メールアドレスのない登録者が数万人規模いる。電話番号は分かっているので、SMSで届けたい
- LINEの友だちが、顧客管理システムの誰なのか分からない。LINEはリード獲得用に別のデータベースで回してきたため、CRM(Salesforce)のIDとつながっていない
- アンケートを、できるだけ多くの人に届けたい。退職の兆しを早めに拾うため、メール・SMS・LINEの3つで到達させたい
- 求人データを二重に更新している。同じ求人を、メール用とLINE用で別々に手で反映
- 同じ人に2通届く心配がある。別のメールアドレスで二重に登録されている、勤務先のアドレスに送ってしまう
- LINEの数字がまとまらない。送信・開封・クリックが別々に記録され、日次のレポートは担当者が手で計算
- 電話番号の形式でつまずく。国際形式(E.164)にそろっていない番号は、SMSの宛先が作られない
一つひとつは小さな困りごとです。しかし根っこは同じで、連絡先と記録がチャネルごとに別々にあり、「この人に、どれで届くのか」を1か所で判断できない。
そのため、届かない人を見つけることも、重複を防ぐことも、効果を比べることも、人の手に頼るしかなくなっていました。
例2:接点が営業個人のLINEに閉じている不動産会社
投資用の物件を仕入れて投資家に販売している会社です。お客様との接点は営業個人のLINEが中心で、会社として物件を案内するメールの仕組みはありません。
LINEは届きやすい反面、次のような状態になっていました。
- 誰にどんな連絡をしたかが、営業ごとに閉じている。「このお客様には先週この物件を案内した」が会社として見えない
- 会社からの一斉の案内ができない。新着物件や価格改定を、条件の合うお客様全員に届ける手段がない
- 何か月も連絡が空いているお客様に気づけない。最後の連絡日が会社のデータとして残らない
- メールアドレスは持っているのに使われていない。反響時に登録された連絡先が、LINEとは別の場所に置かれたまま
こちらは「チャネルを束ねる」以前に、いちばん届くチャネルが会社のデータとつながっていない例です。営業が異動や退職をすれば、そのお客様との接点ごと失われます。
2つの例に共通していること
業種は違っても、つまずいている場所は同じです。
連絡先と連絡の記録が、チャネルごと・担当者ごとに分かれている。だから「このお客様に、会社としてどれで届くのか」を1か所で判断できない。
以下では、この状態をほどいていく順番に沿って、実務のポイントを整理します。
まず「誰に、どれで届くか」を棚卸しする
最初にやるのは、配信の設計ではなく、連絡先の棚卸しです。登録者全員について、どのチャネルで届くのかを数えます。

| 区分 | 人数 | 打ち手 |
|---|---|---|
| メール・LINE・SMSのすべてで届く | ◯人 | 優先順位を決めて、重ねて送らない |
| メールだけ届く | ◯人 | LINEの友だち追加を案内する |
| LINEだけ届く | ◯人 | CRMとのひも付けを最優先で進める |
| SMSだけ届く(電話番号のみ) | ◯人 | SMSで届けつつ、メールアドレスやLINEを取りにいく |
| どれでも届かない | ◯人 | 面談や電話で連絡先を取り直す |
この表が作れないなら、それ自体が「連絡先がつながっていない」サインです。穴が多いのは、次の3か所です。
穴1:メールアドレスがない層
電話で登録を受けた人、応募サイト経由で電話番号だけ分かっている人は、メールアドレスを持っていないことがあります。
この層には、まずSMSで届けます。SMSの文面に希望条件の登録フォームへのリンクを入れ、そこでメールアドレスやLINEの友だち追加を案内すれば、次からはより安いチャネルで届けられます。
穴2:LINEの友だちが、CRMの誰なのか分からない
LINEの友だちには、LINEが発行する「ユーザーID」がつきます。表示名やLINE IDとは別の値で、事業者(プロバイダー)ごとに異なります(出典:LINE Developers「ユーザーIDを取得する」)。
つまり何もしなければ、LINEの友だちとCRMの顧客は別人のまま並びます。つなぐ方法は2つです。
- ID連携(アカウント連携)。LINE上で自社サービスにログインしてもらい、LINEのユーザーIDと顧客IDをひも付ける。LINEが公式に用意している仕組み(出典:LINE Developers「ユーザーアカウントを連携する」)
- 友だち追加の直後に本人確認を入力してもらう。登録済みの電話番号やメールアドレスでCRMと照合する。開発は軽いが、入力した人しかつながらない
どちらの場合も、結果はCRMの顧客レコードにLINEのユーザーIDとして保存します。LINEを別のデータベースで運用してきた場合は、ひも付けがどれくらいできているかを数えるところから始めます。
穴3:電話番号の形式がそろっていない
「090-1234-5678」「09012345678」「+81 90 1234 5678」。同じ番号でも、入力された経路によって形式はばらばらです。
SMSの配信サービスによっては、宛先を国際形式で渡す必要があります。国際形式(E.164)では、国番号81の前に「+」をつけ、先頭の「0」を外して「+819012345678」と書きます(参考:ITU-T Recommendation E.164)。
例1の会社では、形式がそろっていない番号に宛先が作られず、送れていない人がいると後から気づきました。電話番号は、登録・取り込みの時点で国際形式に変換してCRMに持っておくのが確実です。固定電話の番号とは区別しておきます。
同じ人に2通届く問題は「CRMのID」で名寄せする

チャネルを増やすと、重複も増えます。
- 同じ人が、別のメールアドレスで2回登録している
- 個人のアドレスと、勤務先のアドレスの両方が登録されている
- 同じ人に、メールとLINEの両方で同じ案内が届く
重複を防ぐには、「何をもって同じ人とみなすか」の基準を1つに決めることが欠かせません。メールアドレスを基準にすると、アドレスが2つある人は2人になります。電話番号も、家族で共有していたり番号を変えたりするとずれます。
例1の会社は、基準をCRMが持っている顧客の固有IDにしました。メールアドレス、LINEのユーザーID、電話番号は、すべて「その顧客IDにぶら下がる連絡先」として扱います。こうすると、連絡先が複数あっても、配信は顧客IDの単位で1回に絞れます。
進め方は次の順です。
- 基準のIDを決める。CRMの顧客IDなど、変わらない値にする
- 候補を洗い出す。電話番号が同じ、氏名と生年月日が同じ、といった条件で抽出する
- 人が確認して統合する。自動で統合すると、家族を1人にまとめる事故が起きる
- 送り先のアドレスを決める。勤務先のアドレスは配信先にしない
なお、HubSpotはコンタクトをメールアドレスで自動的に重複判定します。レコードIDや、値の重複を許さない設定にしたカスタムプロパティ(1つのオブジェクトにつき最大10個)も、取り込み時の照合に使えます(出典:HubSpotナレッジベース「Deduplication of records」、2026年9月8日更新)。
他システムの顧客IDをこの項目として持たせておけば、システムをまたいだ照合の土台になります。データの整理はCRMデータクレンジング完全ガイドでも解説しています。
優先順位を決め、届かなかった人にだけ次のチャネルで送る
名寄せができたら、チャネルの使い方を決めます。「全部に送る」ではなく、目的ごとに優先順位を決め、届かなかった人にだけ次のチャネルで送る段階的な配信です。

目的ごとに、主役のチャネルを決める
| 目的 | 主役 | 補う | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 新着の案内(求人・物件など) | メール | LINE(短い告知) | 中身はメール。LINEは気づいてもらう入口 |
| 面談・内見・来店のリマインド | LINE | SMS | 短く確実に。LINEが届かない人にSMS |
| アンケート | LINE | メール → SMS | できるだけ多くの人に。段階的に広げる |
| メールアドレスのない人への案内 | SMS | なし | 用件は短く。詳細はリンク先で |
段階的な配信の組み方
例1の会社が考えていた、退職の兆しをつかむアンケートで組むとこうなります。
- LINEの友だちには、まずLINEで送る。気づかれやすく、費用も小さい
- 2日たっても回答がない人、LINEでつながっていない人には、メールで送る
- それでも回答がない人、メールアドレスがない人には、SMSで送る。費用のかかるSMSは最後の手段
- 回答した時点で、以降の送信を止める。回答した人に催促が届くのは、いちばん避けたい事故
待つ日数や、どこまで追いかけるかは、目的の緊急度で変えます。
大事なのは、「届いたか」「行動したか」を顧客IDの単位で判定し、次のチャネルに進むかを決めること。チャネルごとに別々に配信していると、この判定そのものができません。
送りすぎを防ぐ上限をチャネル横断で決める
メールで週1回、LINEで週1回、SMSで月2回。それぞれは控えめでも、受け取る側から見れば、同じ会社から何度も連絡が来ている状態です。
- 1人あたりの上限を、チャネルの合計で決める(例:1週間に合計2通まで)
- 上限に達したら、優先度の低い配信から見送る
- 応募・内見・面談の予定が入っている人には、新着の案内を止める
求人や物件の情報をメール用とLINE用で別々に更新しているなら、データの置き場所を1つにまとめ、各チャネルはそこから読み出す形にします。二重更新がなくなり、終わった求人や成約済みの物件が片方にだけ残る事故も防げます。
相手ごとに合う求人や物件をメールへ自動で差し込む方法は、人材紹介・派遣向けの記事と不動産向けの記事で解説しています。
配信停止は、チャネルをまたいで同じIDで管理する
あるチャネルで「もう送らないで」と言われたとき、他のチャネルはどうするか。先に決めておかないと、現場の判断がばらつきます。

| 停止の申し出 | 最低限やること | 決めておくこと |
|---|---|---|
| メールの配信停止 | そのアドレスに広告宣伝のメールを送らない | LINE・SMSの案内を続けるか |
| SMSの停止 | その番号に広告宣伝のSMSを送らない | メール・LINEの案内を続けるか |
| LINEのブロック | 届かないので送れない | メールやSMSで同じ案内を送るか |
おすすめは、停止を「どのチャネルの、どの種類の連絡を止めるか」として顧客IDに記録することです。
「求人の案内は全チャネルで止めるが、就業中の連絡(シフトや手続き)は続ける」のように分けて持てば、本人の意思を尊重しつつ必要な連絡は届けられます。停止を受けた時期と方法も記録に残します。
法令:特定電子メール法はSMSも対象になる
広告や宣伝のメッセージを送るときは、特定電子メール法を守る必要があります。総務省・消費者庁のパンフレットで示されている要点です(出典:総務省・消費者庁「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律のポイント」)。

- SMSも対象。電話番号を使ってメッセージをやりとりするサービスも含まれる
- オプトイン。原則、あらかじめ同意した人にだけ送れる(取引関係がある場合など一定の例外あり)
- 同意の記録を保存する。保存期間は、最後に送った日から1か月(措置命令を受けた場合は1年)
- 表示義務。送信者の氏名または名称、受信拒否ができること、その通知先を表示する
- 受信拒否への対応。同意があっても、拒否の通知を受けたら以後は送れない
違反には命令や罰則があります。SMSは文字数が限られますが、送信者名と停止の方法は省けません。冒頭で社名を名乗り、停止用のURLや返信での停止方法を入れます。
載せる情報そのものにも、業種ごとのルールがあります。
- 求人。職業安定法の「求人情報の的確な表示」の対象。虚偽・誤解を生む表示の禁止、情報を正確・最新に保つこと(出典:厚生労働省「職業紹介事業者の皆さまへ」)
- 物件。不動産の表示に関する公正競争規約で、成約済みなど取引できない物件の表示は「おとり広告」として禁止(出典:不動産公正取引協議会連合会「おとり広告ガイドライン」)
チャネルごとにデータを手で更新していると、終わった求人や物件が片方にだけ残りやすくなります。
効果は「届いた・開いた・行動した」をそろえて見る
チャネルを束ねたら、効果も同じ物差しで見ます。ここで知っておきたいのは、チャネルによって測れるものが違うことです。

| 指標 | メール | LINE | SMS |
|---|---|---|---|
| 届いた | 到達・不達が分かる | 送信数は分かる | サービスによっては到達結果を確認できる |
| 開いた | 画像の読み込みで推定(ぶれやすい) | 個人単位では取れない。集計値のみ | 測れない |
| 行動した | クリック、回答、応募・問い合わせ | タップ、回答、応募・問い合わせ | クリック、回答、応募・問い合わせ |
特にLINEは注意が必要です。
Messaging APIでは、プライバシー保護の観点から、個別のメッセージの開封やタップを1人ずつは取得できません。送信時に付けた「ユニット」ごとの集計値が得られる仕組みで、20未満の値は返らず、数値には誤差も含まれます(出典:LINE Developers「ユニットベースの統計情報」)。
例1の会社が日次レポートを手で作っていた背景には、この仕組みの違いがあります。対策は3つです。
- 共通の指標は「行動した」に置く。開封は横断で比べる指標にしない。クリック、回答、応募、面談の予約など、どのチャネルでも測れる行動を主な指標にする
- リンクにチャネルの目印をつける。LINE用・メール用・SMS用でURLのパラメータを分け、どこから来た行動かを分かるようにする
- 行動を顧客IDに記録する。段階的な配信の「次に進むか」の判定にそのまま使え、レポートも自動で集計できる
開封率は参考値。「何人に届いて、何人が行動したか」を顧客IDの単位で数える。これだけで、数字を転記して手で計算する作業は大きく減ります。
HubSpotで束ねる場合の現実的な構成
ここまでの設計は、ツールを問わず使える考え方です。HubSpotを土台にする場合は、できることとできないことを先に押さえます。

- メール。Marketing Hubで、配信・停止の管理・効果測定まで標準の機能で行える
- SMS。HubSpotのSMS機能は米国の番号から送信し、宛先は米国・カナダに限られる(出典:HubSpotナレッジベース「Set up SMS messaging」、2026年10月5日更新)。日本の携帯電話には、国内のSMS配信サービスと連携して送る
- LINE。直接つながる標準の機能はない。連携アプリ、iPaaS(ノーコード連携ツール)、Messaging APIを使った開発のいずれかで実現する
つまりHubSpotの役割は、すべてのチャネルを自前で送ることではありません。1人の顧客のIDと、連絡先・同意・停止・行動の記録を1か所に持つ土台です。
構成は次のようになります。
- コンタクトに、メールアドレス、国際形式の携帯電話番号、LINEのユーザーID、他システムの顧客IDを持たせる
- チャネルごと・連絡の種類ごとの同意と停止の状態を、項目として持たせる
- 「誰に、どの順で、どのチャネルで送るか」の判定はワークフローで行い、SMSとLINEの送信は外部サービスに任せる
- 送信結果や回答をコンタクトに書き戻し、次の判定とレポートに使う
どこまでを標準の機能で作り、どこからを連携や開発で補うかは、登録者の数、使っているSMS・LINEのツール、既存の顧客管理システムとの関係で変わります。別のシステムに顧客データがある場合は、どちらのIDを基準にするかの設計から始めます(参考:顧客ID統合とは?バラバラのツール運用をHubSpotでつなぐ進め方)。
費用面では、Marketing Hubはメールの配信対象にする「マーケティングコンタクト」の数で料金が変わります。SMSやLINEでしか届かない人まで対象にすると、メールを送らない人の分まで費用がかかります(参考:HubSpotマーケティングコンタクト課金を3割削減する設定レシピ)。
明日から始める5つのステップ

- 連絡先を棚卸しする。登録者全員について、メール・LINE・SMSのどれで届くかを数える
- 基準のIDを決めて名寄せする。CRMの顧客IDを基準に、重複の候補を人が確認して統合する
- 連絡先の形式をそろえる。電話番号は国際形式に、LINEの友だちはユーザーIDでCRMにひも付ける
- 目的ごとの優先順位表を作る。主役と補うチャネル、次に進むまでの日数、止める条件、1人あたりの上限を決める
- 停止と測定を共通にする。停止は顧客IDに記録し、効果は「行動した」を共通の指標にする
まとめ
- リーチを最大化する近道は、チャネルを増やすことではなく、1人の顧客にどのチャネルで届くかをCRMの1つのIDにまとめること
- メールは情報量、LINEは気づかれやすさ、SMSは電話番号だけで届く範囲の広さ。強みに合わせて役割を分ける
- 連絡先の穴を埋め、CRMの顧客IDを基準に名寄せする
- 目的ごとに優先順位を決め、届かなかった人にだけ次のチャネルで送る。上限と配信停止はチャネルをまたいで管理する
- 特定電子メール法はSMSも対象。同意・表示・拒否への対応をチャネル共通で整える
- 効果は「行動した」を共通の指標にして、顧客IDの単位で集計する
UniteXは、HubSpot Platinum Solutions Partnerです(日本でPlatinum以上の認定を受けているのは17社。2026年9月時点)。顧客データの名寄せや他システムとの連携、SMS配信サービスやLINEとの連携を含めたHubSpotの設計・構築を支援しています。
「チャネルは増えたのに、誰にどれで届いているのか分からない」とお感じでしたら、UniteXのHubSpot構築支援から、まずは今の顧客データの状態をお聞かせください。
よくある質問(FAQ)
Q1. メール・LINE・SMSは、結局どれを優先すべきですか?
目的によって変わります。情報量の多い求人や物件の案内はメール、短く確実に気づいてほしいリマインドはLINE、どちらも届かない人への連絡はSMS、が基本です。目的ごとに主役を決め、届かなかった人にだけ次のチャネルで送ると、重複と費用を抑えられます。
Q2. LINEの友だちを、顧客管理システムの顧客とつなぐにはどうすればいいですか?
LINE公式の「ID連携(アカウント連携)」を使う方法と、友だち追加の直後に登録済みの電話番号やメールアドレスを入力してもらって照合する方法があります。どちらも、結果はLINEのユーザーIDとして顧客のレコードに保存します。ユーザーIDは事業者(プロバイダー)ごとに異なる値になる点に注意してください。
Q3. SMSも特定電子メール法の対象ですか?
対象です。総務省・消費者庁のパンフレットで、電話番号を使ってメッセージをやりとりするサービス(SMSなど)も対象と示されています。事前の同意、同意の記録の保存、送信者名と受信拒否の方法の表示、拒否への対応が必要です。
Q4. HubSpotだけで、日本の携帯電話にSMSを送れますか?
2026年10月時点のHubSpotのナレッジベースでは、SMS機能は米国の番号から送信し、宛先は米国・カナダに限られます。日本の携帯電話に送るには、国内のSMS配信サービスと連携し、送る相手や順番の判定をHubSpotで行う構成が現実的です。
Q5. LINEの開封率を、メールと同じように1人ずつ測れますか?
測れません。LINEのMessaging APIでは、プライバシー保護の観点から個別の開封は取得できず、集計値として得る仕組みです。チャネルをまたいで比べるときは、開封ではなく、タップや回答、応募といった行動を共通の指標にします。
Q6. 同じ人が複数のメールアドレスで登録されています。どれに送ればいいですか?
まず、CRMの顧客IDなど変わらない値を基準に、同じ人の登録を1つにまとめます。そのうえで送り先を1つ決め、勤務先のアドレスは配信先にしません。自動で統合すると別人をまとめることがあるため、最初は候補を人が確認するのが安全です。
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