この記事を読んでほしい人 1 「HubSpotって何ができるの?」をざっくり理解したい方 → 6つのHub製品・Smart CRM・Breezeなど全体像を一記事で把握できます 2 HubSpotの導入を検討していて、進め方や判断基準を知りたい方 → プラン体系・シート課金の仕組みから、導入の4ステップまで解説しています HubSpotとは?基本概要をわかりやすく解説 HubSpot(ハブスポット)とは、アメリカ・ボストンに本社を置くHubSpot, Inc.が提供するAI搭載のカスタマープラットフォームです。従来のCRM(顧客関係管理)の枠を超え、マーケティング、営業、カスタマーサービス、コンテンツ管理、データ連携といったビジネスの中核業務をひとつのプラットフォーム上で統合。「顧客とのつながり」を軸に、チーム間の連携とシームレスな顧客体験の実現を支援します。 2006年の創業以来、「インバウンド」という思想を軸に成長を続け、2026年3月現在、世界135カ国以上で26万8,000社を超える企業に導入されています。ニューヨーク証券取引所に上場しているグローバル企業でありながら、中小企業からエンタープライズ企業まで幅広い規模の企業に対応できる柔軟性を備えています。 ① ひとつの基盤で完結 — マーケティング・営業・CSの各ツールが共通のCRM上で動く ② AIが業務を支援 — プラットフォーム全体にAIエンジン「Breeze」が組み込まれている ③ 必要に応じて拡張できる — 1,700以上のアプリ連携、学習コンテンツ、コミュニティで広がる 日本法人であるHubSpot Japan株式会社は2016年に設立され、東京都千代田区に拠点を構えています。日本語によるサポート体制やパートナーエコシステムも年々充実しており、BtoB・BtoCを問わず国内での導入が広がっています。 HubSpotの歴史と「インバウンド」の思想 HubSpotを理解するうえで欠かせないのが、同社が提唱する「インバウンド」という考え方です。 2006年当時、マーケティングの主流は「アウトバウンド」——つまり、見込み客リストを購入して一斉にメールを送ったり、面識のない相手にいきなり電話をかけたりする手法でした。この手法に疑問を持った共同創業者のブライアン・ハリガンとダーメッシュ・シャーが、MITの大学院で出会い、HubSpotを立ち上げました。 インバウンドの基本思想は、「相手に価値を提供することで、自然と顧客が集まってくる仕組みをつくる」というものです。具体的には、ブログやSNS、動画などで見込み客にとって役立つコンテンツを発信し、検索やソーシャルメディアを通じて自社を見つけてもらう。そして、見込み客の興味・関心に合わせた情報提供を段階的に行いながら、信頼関係を構築していく——これがインバウンドマーケティングの核心です。 HubSpotのすべての製品は、このインバウンドの思想に基づいて設計されています。営業活動においても、ニーズが顕在化した見込み客にのみアプローチするという原則が徹底されており、売り手・買い手双方にとって健全なコミュニケーションを実現する仕組みが組み込まれています。 💡 インバウンドからLoop Marketingへ 2025年秋にHubSpotが発表した「Loop Marketing(ループマーケティング)」は、インバウンドの思想をさらに進化させたフレームワークです。生成AIの普及によりGoogle検索からのクリックが減少し、従来のマーケティングファネルが機能しにくくなっている現状を受け、「ブランドの表現→個別化→増幅→進化」の4ステージを循環させる新しいモデルを提唱しています。 ▶ 関連記事:Loop Marketing(ループマーケティング)とは?HubSpotが提唱する新フレームワークを解説 HubSpotの製品構成 — 6つのHub HubSpotのプラットフォームは、Smart CRM(スマートCRM)を基盤として、業務目的ごとに分かれた6つのHub(製品)で構成されています。各Hubは個別に契約でき、必要な製品だけを選んで組み合わせることが可能です。 Smart CRM(スマートCRM)とは、HubSpotのすべてのHub製品の基盤となるCRMです。コンタクト・会社・取引・チケットなどの顧客データを一元管理し、各Hubがこのデータを共有する仕組みになっています。つまり、どのHubを契約しても、共通のCRMデータベース上で動作するため、部門間のデータ分断が構造的に発生しません。Freeプランから利用を開始でき、より高度なデータ管理が必要な場合はProfessional(¥6,000/月/シート)やEnterprise(¥9,000/月/シート)へアップグレードも可能です。 Marketing Hub マーケティングハブ リード獲得・育成・MA全般。メール配信、LP作成、SEO、ワークフロー自動化。 Sales Hub セールスハブ 営業支援(SFA)。パイプライン管理、商談トラッキング、見積作成、AIコール分析。 Service Hub サービスハブ カスタマーサポート・CS。チケット管理、ナレッジベース、CSAT/NPS測定。 Content Hub コンテンツハブ CMS・コンテンツ管理。Webサイトビルダー、ブログ、AIコンテンツ生成。 Data Hub データハブ データ統合・品質管理。外部データ同期、AI重複検出、DWH連携。 Commerce Hub コマースハブ 見積り・請求・決済管理(CPQ)。サブスクリプション管理、eサイン、収益分析。 Marketing Hub(マーケティングハブ) Marketing Hubは、リードの獲得から育成までのマーケティング活動全般を支援する製品です。いわゆるMA(マーケティングオートメーション)ツールとしての機能を網羅しています。 主な機能として、メールマーケティング(パーソナライズ配信・A/Bテスト対応)、ランディングページ・フォームの作成、SEO最適化ツール、SNSの投稿管理・分析、広告のトラッキングと連携、マーケティングオートメーション(ワークフロー)、リードスコアリング、カスタマージャーニーの自動化などがあります。 2025年のアップデートでは、AIによる類似リストの自動作成機能や、見込み客ごとに最適なジャーニーを設計するAI自動化機能が追加され、Marketing Hub Enterpriseが大幅に強化されました。 Sales Hub(セールスハブ) Sales Hubは、営業チームの活動を効率化し、成約率を向上させるためのSFA(営業支援)製品です。 商談管理(パイプライン管理)、メールテンプレートとトラッキング、自動タスク作成、コール機能と通話録音・文字起こし、見積もり作成、営業レポート・ダッシュボード、AIによる通話サマリー生成などの機能を備えています。 HubSpotのSales Hubが特に優れているのは、Marketing Hubとのシームレスな連携です。マーケティングチームが育成した見込み客の行動履歴を営業担当がそのまま参照でき、「いつ、どのページを見て、どのメールを開封したか」を把握した上でアプローチを開始できます。 Service Hub(サービスハブ) Service Hubは、カスタマーサポートとカスタマーサクセスを支援する製品です。 チケット管理、共有受信トレイ、ナレッジベース(FAQ)の構築、カスタマーポータル、顧客満足度アンケート(CSAT・NPS)、SLA管理、チャットボットなどの機能を提供しています。 CRMに蓄積された顧客情報とサポート履歴が一元化されるため、問い合わせを受けた時点で顧客の購入履歴や過去のやり取りを即座に確認でき、的確かつスピーディーな対応が可能になります。 Content Hub(コンテンツハブ) Content Hubは、Webサイトやブログなどのコンテンツ管理を行うCMS製品です。従来の「CMS Hub」をリブランディングしたもので、AIによるコンテンツ生成機能が大幅に強化されています。 ドラッグ&ドロップのWebサイトビルダー、ブログ作成・管理、SEO最適化ツール、動画ホスティングと管理、AIによるコンテンツ生成・翻訳、パーソナライズされたコンテンツ配信、動画クリップエディターなどの機能を備えています。 Data Hub(データハブ) Data Hubは2025年秋に発表された最新の製品で、従来の「Operations Hub」の後継にあたります。社内外のデータソースを統合し、AIを活用してデータの整理・活用を支援することが目的です。 データスタジオ(スプレッドシート形式のデータ管理UI)、外部データソースとの自動同期、AIによるデータ品質管理(重複・エラーの自動検出と修正)、データウェアハウスとの連携などの機能を提供します。 企業が保有するデータのうち、実際に意思決定に活用されているのはわずか20%程度と言われています。Data Hubは、こうした散在するデータを一箇所に集約し、セグメント化やレポート作成の精度を飛躍的に高めることを目指しています。 Commerce Hub(コマースハブ) Commerce Hubは、見積り(CPQ:Configure-Price-Quote)、請求書、決済、サブスクリプション管理をCRM上で一元化するための製品です。営業チームが見積り作成から決済回収までのプロセスを、外部ツールに頼ることなくHubSpot内で完結できるよう設計されています。 主な機能として、AIを活用した見積り作成と承認ワークフロー、電子署名、請求書の自動発行、定期課金(サブスクリプション)管理、決済処理(HubSpot PaymentsまたはStripe連携)、収益分析ダッシュボードなどがあります。 Commerce Hubの料金体系は他のHubと同様にシート単位の課金で、Professional(¥6,840/月/シート)とEnterprise(¥10,080/月/シート)の2プランが用意されています。なお、決済処理オプション(Stripe連携による支払い回収)は全プランで利用可能です。Smart CRM上で動作するため、見積りデータ・決済データがそのまま顧客レコードに紐付き、営業レポートや収益予測の精度向上にも貢献します。 Breeze — HubSpotのAI機能 HubSpotは2024年以降、プラットフォーム全体にAI機能を急速に拡充しています。その中心となるのが「Breeze」と呼ばれるAIエンジンです。Breezeは大きく3つの要素で構成されています。 Breeze要素 概要 主な用途 Breeze Copilot チャット形式のAIアシスタント メール下書き、レポート要約、CRMインサイト取得 Breeze Agents 定型業務を自律処理するAIエージェント コンテンツ生成、リードフォロー自動化、24時間顧客対応 Breeze Intelligence データインテリジェンス機能 企業情報エンリッチメント、バイヤーインテント分析、フォーム短縮 Breeze Copilot(AIアシスタント) Breeze Copilotは、HubSpotの各画面からチャット形式でアクセスできるAIアシスタントです。メールの下書き作成、ブログ記事の草案生成、レポートデータの要約、CRMデータに基づく顧客インサイトの取得など、日常業務の幅広い場面で活用できます。CRMに蓄積された自社データを参照して回答を生成するため、一般的な生成AIツールよりもビジネスに即した出力が得られます。 Breeze Agents(AIエージェント) Breeze Agentsは、定型的な業務を自律的に処理するAIエージェント群です。コンテンツの作成・最適化を行うコンテンツエージェント、見込み客へのフォローアップ