


大手IT企業で3年半にわたり大手企業向け営業に従事した後、Sansan株式会社にて営業・カスタマーサクセスを経験。その後HubSpot Japanに入社し、提案営業として数百社のHubSpot導入を推進。2024年に株式会社UniteXを創業。夫婦ともにHubSpot出身で、家族でHubSpotにフルコミットする体制のもと、九州エリア初のHubSpot Gold Solutions Partner認定を経て、西日本エリア初のPlatinum Solutions Partnerに認定。AI×CRMで企業の事業変革を支援している。
Loop Marketing(ループマーケティング)とは、HubSpotが2025年のINBOUND カンファレンスで正式に発表した、AIの効率性と人間の信頼性を組み合わせた循環型マーケティングフレームワークです。Express(表現)・Tailor(個別化)・Amplify(増幅)・Evolve(進化)の4つのステージを繰り返すことで、持続的な成長を実現します。
従来のマーケティングファネルが「認知 → 検討 → 購入」で終わる直線モデルだったのに対し、Loop Marketingは改善と進化を続ける循環構造を採用しています。購入はゴールではなく、次の成長サイクルの始まりとして捉えるのが最大の特徴です。
HubSpotのCMO(最高マーケティング責任者)キップ・ボドナー氏は、現在の検索トラフィックの約6割がクリックにつながっておらず、従来のファネル型アプローチが機能不全に陥っていることを指摘しています。AIが検索結果を直接提示する時代において、Loop Marketingは顧客がいる「あらゆる場所」でブランドメッセージを届けるための新しいプレイブックなのです。
Loop Marketingが提唱された背景には、マーケティング環境の急激な変化があります。従来のインバウンドマーケティングの基盤を揺るがす、3つの構造的な変化が起きています。
ChatGPTやPerplexity、Google AI Overviewsなどのチャットベースのツールで直接回答を得られるようになり、ウェブサイトへのクリックスルー率が大幅に低下しています。Google検索の約6割がクリックにつながらない「ゼロクリック検索」となっている現状では、従来のSEO施策だけでは成果が出にくくなっています。
顧客はTikTok、YouTube、ポッドキャスト、コミュニティ、ニュースレターなど、多様なチャネルで情報を消費しています。購買行動はもはや直線的ではなく、予測不可能で断片的になっています。
AIによって誰もがコンテンツを大量に生成できるようになった結果、「自社ならでは」の独自視点が差別化要因として、かつてないほど重要になっています。
※ HubSpot社がLoop Marketingを自社で実践した際の公開数値
Loop Marketingは「Express → Tailor → Amplify → Evolve」の4つのステージで構成され、これらを継続的に回すことで成果を積み上げていきます。最も大きな課題を抱えるステージから始めることが推奨されています。
AIを活用する「前に」、自社ブランドの独自視点・トーン・価値観を明確に言語化するステージです。AIが大量のコンテンツを生成できる時代だからこそ、「自社らしさ」を定義することが出発点になります。
具体的には、ICP(理想的な顧客プロファイル)の策定、ブランドスタイルガイドの作成、自社が解決すべき3〜5つのコア課題の特定を行います。HubSpotのBreezeアシスタントを使って高価値顧客を分析し、AIがコンテンツ生成する際の「レシピ」を整備します。
CRMデータ、通話記録、ウェブサイト上の行動データなどを統合し、顧客一人ひとりに合わせた文脈的なメッセージを大規模に届けるステージです。
単なる「{氏名}様」の差し込みではなく、「どうしてここまでわかるのか」と感じてもらえるレベルの深いパーソナライゼーションを目指します。HubSpot社内テストでは、この個別化によりコンバージョン率が82%向上したと報告されています。
顧客が実際にいる場所でコンテンツを展開し、リーチを拡大するステージです。従来のSEOに加えて「AEO(Answer Engine Optimization/AIエンジン最適化)」が重要な役割を果たします。
AEOとは、ChatGPTやPerplexityなどのAI検索エンジンの回答に自社コンテンツが引用・推奨されることを目指す取り組みです。SEOが「検索結果の上位5位以内」を目指すのに対し、AEOは「AIの回答の一部になる」ことを目標とします。
YouTube、ポッドキャスト、ニュースレター、ソーシャルメディア、クリエイターパートナーシップなど、多様なチャネルへの展開を行います。
AIを活用してキャンペーンの成果をリアルタイムで分析し、迅速に学び、戦略を継続的に改善するステージです。四半期レビューを待つのではなく、常にデータから学び続けます。
効率(コンテンツの速度とコスト)、エンゲージメント(CTR・コンバージョン)、AI可視性(LLMでの引用・言及)の3軸で測定し、成果データを次のサイクルのExpressに戻すことでフレームワーク全体を進化させます。
ファネル型マーケティングが完全に不要になるわけではありません。特にBtoBでは購買プロセスが比較的明確なケースも多いため、ファネルの考え方は基本フレームワークとして依然有効です。Loop Marketingはファネルを否定するものではなく、ファネル的な段階設計の上に「循環・改善」の思想を加えたものと理解するのが適切です。
| 比較項目 | ファネル型 | Loop Marketing |
|---|---|---|
| 構造 | 直線型(認知→検討→購入) | 循環型(Express→Tailor→Amplify→Evolve) |
| ゴール | 購入(コンバージョン) | 持続的な成長サイクルの構築 |
| AIの位置づけ | 補助的ツール | ハイブリッドチームの一員 |
| 検索戦略 | SEO中心 | SEO + AEO(AIエンジン最適化) |
| チャネル | ウェブサイト・ブログ中心 | 多チャネル分散(YouTube・SNS・AI検索等) |
| 改善サイクル | 四半期レビュー | リアルタイム・継続的最適化 |
| パーソナライズ | セグメント単位 | 個人レベルの文脈的パーソナライズ |
| 顧客との関係 | 購入で完了 | 購入後も循環的に関係を深化 |
Loop Marketingのフレームワーク自体はプラットフォームに依存しませんが、HubSpotの統合プラットフォームを使うことで実装が大幅に効率化されます。各ステージに対応する主要ツールを紹介します。
Loop Marketingを自社に導入する際のポイントを、実践的な観点からまとめます。
ファネル型は「購入」で終わる直線モデルですが、Loop Marketingは「改善と進化」を続ける循環モデルです。購入は終着点ではなく新たな始まりとして捉え、成果データを次のサイクルに戻すことで持続的な成長を実現します。
Loop Marketingのフレームワーク自体はプラットフォームに依存しないため、どのマーケティングスタックでも適用可能です。ただし、HubSpotの統合プラットフォームを使うとCRM・コンテンツ制作・メール・分析がすべて連携しているため、実装が大幅に効率化されます。
HubSpotは「最も弱いステージ」から始めることを推奨しています。必ずしもExpressから順番に進める必要はありません。ブランドの言語化は済んでいるがパーソナライズが弱い場合はTailorから、チャネルが限定的な場合はAmplifyから着手するのも有効です。
AIはLoop Marketingの効率を大幅に高める要素ですが、フレームワークの本質は「人によるブランド表現と戦略判断」と「継続的な改善サイクル」にあります。AIがなくても循環型の考え方を取り入れることは可能です。ただし、AI時代に設計されたフレームワークであるため、AIとの協業によって最大の効果を発揮します。
AEOとは、ChatGPTやPerplexityなどのAI検索エンジンの回答に自社コンテンツが引用・推奨されるよう最適化することです。具体的には、超ロングテールコンテンツの作成、FAQ構造化データの整備、明確な定義文の配置、エンティティ(固有名詞・専門用語)の正確な表現などを行います。SEOが「検索結果上位」を目指すのに対し、AEOは「AIの回答の一部になる」ことを目標とします。
代替ではなく「進化形」です。インバウンドマーケティングの核心である「顧客に価値あるコンテンツを提供し、信頼関係を構築する」という原則は変わりません。Loop Marketingは、この基盤の上にAI時代の新しい要素(AEO、マルチチャネル展開、AIパーソナライゼーション)を加えたものです。
実践可能です。むしろ中小企業こそ、AIの力を活用することで大企業に匹敵するパーソナライゼーションやマルチチャネル展開を実現できるポテンシャルがあります。まずはExpressフェーズで「自社らしさ」を言語化するところから小さく始め、リソースに合わせて段階的にループを拡張していくアプローチが推奨されます。









