

大手IT企業で3年半にわたり大手企業向け営業に従事した後、Sansan株式会社にて営業・カスタマーサクセスを経験。その後HubSpot Japanに入社し、提案営業として数百社のHubSpot導入を推進。2024年に株式会社UniteXを創業。夫婦ともにHubSpot出身で、家族でHubSpotにフルコミットする体制のもと、九州エリア初のHubSpot Gold Solutions Partner認定を経て、西日本エリア初のPlatinum Solutions Partnerに認定。AI×CRMで企業の事業変革を支援している。
結論: HubSpotのダッシュボードで経営層に見せるべき指標は、役職によって異なります。 CEO(経営者)には売上達成率・パイプライン総額・顧客獲得コスト(CAC)・顧客生涯価値(LTV)の4つ。営業部長には受注率・商談フェーズ別滞留日数・営業担当別パイプライン・フォーキャスト(売上予測)の4つ。マーケティング責任者にはリード獲得数・MQL転換率・チャネル別CPL・キャンペーンROIの4つ。合計12指標を3つのダッシュボードに分けて設定するのが、HubSpot Platinum Partnerとして50社以上を支援してきた私たちの推奨テンプレートです。
HubSpotを導入したものの、「ダッシュボードを作ったけど誰も見ていない」という声は少なくありません。
元HubSpot社員として社内のCS(カスタマーサクセス)チームにいた経験から言えば、失敗の原因は明確です。「見る人」を決めずに指標を詰め込みすぎているのです。
よくある失敗パターンはこうです。
解決策はシンプルです。「誰が」「何の意思決定のために」見るのかを先に決め、役職別にダッシュボードを分けること。
本記事では、HubSpot Platinum Partnerとして多くの企業を支援してきた知見をもとに、経営層が本当に必要とする12の指標を役職別に整理し、そのまま使えるテンプレートとして提供します。
まず、12指標の全体像を一覧で示します。
| # | 指標名 | 対象役職 | HubSpotでの取得方法 | 確認頻度 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 売上達成率(実績/目標) | CEO | 目標レポート(Revenue Goal) | 週次 |
| 2 | パイプライン総額 | CEO | ディールレポート(Deal Pipeline) | 週次 |
| 3 | 顧客獲得コスト(CAC) | CEO | カスタムレポート(広告費÷新規顧客数) | 月次 |
| 4 | 顧客生涯価値(LTV) | CEO | カスタムプロパティ+計算フィールド | 四半期 |
| 5 | 受注率(Win Rate) | 営業部長 | ディールレポート(Won/Total) | 週次 |
| 6 | 商談フェーズ別滞留日数 | 営業部長 | ディールレポート(Time in Deal Stage) | 週次 |
| 7 | 営業担当別パイプライン | 営業部長 | ディールレポート(Owner別) | 週次 |
| 8 | フォーキャスト(売上予測) | 営業部長 | フォーキャストツール | 週次 |
| 9 | リード獲得数 | マーケ責任者 | コンタクトレポート(Create Date) | 週次 |
| 10 | MQL転換率 | マーケ責任者 | ライフサイクルステージファネル | 月次 |
| 11 | チャネル別CPL | マーケ責任者 | アトリビューションレポート | 月次 |
| 12 | キャンペーンROI | マーケ責任者 | キャンペーンレポート | 月次 |
この12指標を3つのダッシュボードに分けて設定します。以下、各役職の4指標を詳しく解説します。
経営者が見るべきは「会社は目標に向かって進んでいるか」を判断できる指標です。細かい営業活動やマーケ施策の詳細は不要。意思決定に直結する4つだけに絞ります。
なぜ必要か: 今月・今四半期の売上が目標に対して何%かを即座に判断するため。
HubSpotでの設定方法:
1. 「レポート」→「ダッシュボード」→「レポートを追加」
2. 「目標」カテゴリから「収益目標の達成状況」を選択
3. 表示形式は「ゲージチャート」が最適(達成率が直感的に分かる)
4. フィルターで期間を「今四半期」に設定
読み方のポイント: 四半期の経過日数に対して達成率が下回っていたら、パイプラインの質(指標2)を確認します。
なぜ必要か: 将来の売上の「種」がどれだけあるかを把握するため。一般的に、目標達成にはパイプライン総額が目標の3〜4倍必要とされます。
HubSpotでの設定方法:
1. 「レポート」→「カスタムレポートビルダー」
2. データソース: 取引(Deals)
3. フィルター: 取引ステージ ≠ 成約・失注
4. 表示: 金額の合計を「数値」で表示
5. 「棒グラフ」でフェーズ別の内訳も合わせて表示すると効果的
読み方のポイント: パイプライン倍率(パイプライン総額 ÷ 売上目標)が3倍を下回ると黄色信号。2倍以下なら即座にリード獲得の強化が必要です。
なぜ必要か: 1社の新規顧客を獲得するためにいくらかかっているかを把握し、投資効率を判断するため。
HubSpotでの設定方法:
1. Marketing Hubの広告連携で広告費を自動取得(Google広告・Meta広告)
2. カスタムレポートで「月間マーケティング費用 ÷ 新規顧客数」を算出
3. 人件費を含める場合は、カスタムプロパティに月次で手動入力
読み方のポイント: CACがLTV(指標4)の1/3以下であれば健全。LTVの1/2を超えると収益性に問題があります。
なぜ必要か: 顧客1社あたりの生涯収益を把握し、CACとのバランスで事業の持続可能性を判断するため。
HubSpotでの設定方法:
1. カスタムプロパティ「月額単価」「契約月数」を取引オブジェクトに作成
2. 計算フィールドで「月額単価 × 平均契約月数」を自動算出
3. コンタクト/会社オブジェクトにロールアップで紐づけ
4. レポートで平均LTVを「数値」として表示
読み方のポイント: LTV/CAC比率が3:1以上であれば成長投資の余地あり。1:1に近づくと、価格改定か解約率改善が急務です。

営業部長が見るべきは「チームは計画どおりに動いているか」「今月の着地見込みはいくらか」の2点です。
なぜ必要か: 商談全体のうち何%が受注に至っているかを把握し、営業プロセスの健全性を測るため。
HubSpotでの設定方法:
1. ディールレポート →「取引結果」レポートを使用
2. 期間フィルターで「今月」を設定
3. 「成約数 ÷ (成約数 + 失注数)」をパーセンテージで表示
4. 担当者別の内訳も横棒グラフで追加すると比較が容易
読み方のポイント: BtoBの一般的な受注率は20〜30%。この数値が急落した場合は、リードの質(マーケ側の問題)か営業スキル(育成の問題)かを切り分けます。
なぜ必要か: 商談が特定のフェーズで止まっていないかを検知し、ボトルネックを特定するため。
HubSpotでの設定方法:
1. ディールレポート →「ディールステージ滞在時間」レポート
2. 各ステージの平均滞在日数を棒グラフで可視化
3. フィルターで「現在進行中の取引」に絞る
読み方のポイント: 「提案済み→見積もり」フェーズの滞留が長い場合、提案内容か価格設定に課題があるサインです。各フェーズの目安日数を事前に設定し、超過した商談は1on1でフォローします。
なぜ必要か: チーム内の偏りを把握し、リソース配分やコーチングの優先順位を決めるため。
HubSpotでの設定方法:
1. ディールレポート →「取引所有者別のパイプライン」を選択
2. 担当者を横軸、金額を縦軸にした棒グラフ
3. 目標線(各担当の月間目標)を追加すると達成度が一目で分かる
読み方のポイント: 特定の担当者にパイプラインが偏っている場合、リード配分ルール(ラウンドロビン等)の見直しが必要です。
なぜ必要か: 今月・今四半期の着地見込みを正確に把握し、経営への報告精度を高めるため。
HubSpotでの設定方法:
1. Sales Hub Professional以上で「フォーキャストツール」を使用
2. 各営業担当が自分の商談に「コミット」「ベストケース」「パイプライン」のカテゴリを設定
3. マネージャーがチーム全体のフォーキャストを確認・調整
4. ダッシュボードには「コミット合計」と「目標」の比較を表示
読み方のポイント: コミット値が目標の90%以上あれば安心ライン。70%を下回ると、追加商談の創出(マーケ連携)が必要です。

マーケティング責任者が見るべきは「リードを量・質ともに十分に供給できているか」「投資は効率的か」の2点です。
なぜ必要か: マーケティング活動の「量」を把握する最も基本的な指標。パイプラインの入口の健全性を測ります。
HubSpotでの設定方法:
1. コンタクトレポート →「新規コンタクト作成数」
2. 期間: 今月 / 先月比較
3. 表示形式: 折れ線グラフ(トレンド把握)
4. オリジナルソース別(オーガニック検索・広告・紹介等)に分解して表示
読み方のポイント: リード数が前月比で20%以上減少した場合、チャネル別に原因を特定します。特にオーガニック検索の減少はSEOの健全性確認が必要です。
なぜ必要か: 獲得したリードのうち、営業に引き渡せる品質(MQL: Marketing Qualified Lead)に達した割合を測るため。
HubSpotでの設定方法:
1. ライフサイクルステージのファネルレポートを使用
2. 「リード → MQL」の転換率を表示
3. ソース別に分解すると、どのチャネルが質の高いリードを供給しているかが分かる
読み方のポイント: 一般的なBtoBのMQL転換率は15〜25%。5%以下の場合、リードの定義(スコアリング基準)自体の見直しが必要です。
なぜ必要か: 各マーケティングチャネルのリード獲得単価を比較し、予算配分を最適化するため。
HubSpotでの設定方法:
1. Marketing Hub Professional以上の広告連携を有効化
2. アトリビューションレポートで「チャネル別コンタクト作成数」を表示
3. 各チャネルの費用を手動またはAPI連携で取得し、CPLを算出
読み方のポイント: CPLだけでなく「CPL × MQL転換率」で実質的なMQL獲得コストを比較します。CPLが安くてもMQLに繋がらないチャネルは見直し対象です。
なぜ必要か: 個別のマーケティング施策がどれだけの売上貢献をしたかを測り、次の施策判断に活かすため。
HubSpotでの設定方法:
1. 「キャンペーン」機能でキャンペーンを作成し、関連アセット(メール・LP・広告等)を紐づけ
2. キャンペーンレポートで「影響を受けた取引金額」を確認
3. キャンペーン費用を入力し、ROI = (売上 - 費用)÷ 費用 × 100% を算出
読み方のポイント: ROIが100%を超えているキャンペーンは継続・拡大候補。マイナスのキャンペーンは即座に停止か改善策を検討します。

12指標を理解したら、実際にHubSpotでダッシュボードを作成しましょう。
HubSpotの「レポート」→「ダッシュボード」→「ダッシュボードを作成」から、以下の3つを作成します。
| ダッシュボード名 | 対象者 | レポート数の目安 |
|---|---|---|
| 経営ダッシュボード | CEO・経営陣 | 4〜6個 |
| 営業マネジメント | 営業部長・マネージャー | 6〜8個 |
| マーケティング成果 | マーケ責任者・CMO | 6〜8個 |
ダッシュボードの「アクション」→「アクセスを管理」で、閲覧権限を設定します。
ダッシュボードの「アクション」→「定期Eメール送信を設定」で、自動配信を設定します。
定期配信を設定することで、ダッシュボードを見に行く習慣がなくても重要指標が自動的に届きます。
ダッシュボードを作っただけでは成果は出ません。経営会議で実際に機能させるための3つの実践的なコツを紹介します。
各指標に対して、以下の3段階の基準を事前に設定しておきます。
| 状態 | 基準例(売上達成率) | アクション |
|---|---|---|
| 青(順調) | 達成率 90%以上(期間進捗比) | 報告のみ。次の議題へ |
| 黄(注意) | 達成率 70〜89% | 原因分析と改善策を議論 |
| 赤(危険) | 達成率 70%未満 | 即座に対策チームを組成 |
このルールがあると、会議で「何を議論すべきか」が明確になり、報告だけで終わる会議がなくなります。
HubSpotのレポートでは、比較期間を設定できます。「今月 vs 先月」「今四半期 vs 前四半期」の前回比を表示することで、トレンドの変化を即座に察知できます。
ダッシュボードのURLを共有し、経営会議のアジェンダに毎回リンクを記載しておくと、参加者が事前に確認してから会議に臨めます。準備のない会議ほど非生産的なものはありません。
はい、HubSpot CRM無料プランでもダッシュボードは作成できます。ただし、作成できるダッシュボードは最大3つ、各ダッシュボードに配置できるレポートは10個までという制限があります。本記事の12指標をすべて実装するには、Marketing Hub ProfessionalやSales Hub Professionalの利用を推奨します。
有料プランでは1ダッシュボードあたり最大30個のレポートを配置できます。ただし、経営向けダッシュボードは情報過多を避けるため、4〜8個に絞ることを推奨します。
ダッシュボードの「定期Eメール送信」機能を使えば、ログインしなくてもPDFやリンク付きのメールで自動配信できます。毎週月曜の朝に自動送信されるよう設定しておけば、経営者はメールを開くだけで最新のKPIを確認できます。
営業担当者向けには、本記事の12指標とは別に「個人用アクションダッシュボード」を作ることを推奨します。架電数・メール送信数・会議設定数といった日次のアクション指標を中心に構成し、経営ダッシュボードとは明確に目的を分けてください。
HubSpotのOperations Hub Professionalに含まれる「計算プロパティ」機能を使えば、「月額単価 × 平均契約月数」の自動計算が可能です。サブスクリプション型ビジネスの場合は、HubSpotの「サブスクリプション」オブジェクトも活用できます。
四半期に1回の見直しを推奨します。事業フェーズや組織の変化に応じて指標を入れ替えます。ただし、売上達成率やパイプライン総額といったコア指標は変えず、補助的な指標を調整するのがベストプラクティスです。
最後に、本記事で紹介した12指標を再掲します。
| 役職 | 指標 | 確認頻度 | HubSpot必要プラン |
|---|---|---|---|
| CEO | 売上達成率 | 週次 | Sales Hub Starter以上 |
| CEO | パイプライン総額 | 週次 | CRM無料 |
| CEO | 顧客獲得コスト(CAC) | 月次 | Marketing Hub Professional |
| CEO | 顧客生涯価値(LTV) | 四半期 | Operations Hub Professional |
| 営業部長 | 受注率 | 週次 | CRM無料 |
| 営業部長 | 商談フェーズ別滞留日数 | 週次 | Sales Hub Starter以上 |
| 営業部長 | 営業担当別パイプライン | 週次 | CRM無料 |
| 営業部長 | フォーキャスト | 週次 | Sales Hub Professional |
| マーケ責任者 | リード獲得数 | 週次 | CRM無料 |
| マーケ責任者 | MQL転換率 | 月次 | Marketing Hub Starter以上 |
| マーケ責任者 | チャネル別CPL | 月次 | Marketing Hub Professional |
| マーケ責任者 | キャンペーンROI | 月次 | Marketing Hub Professional |
最初の一歩: まずはCEOダッシュボードの4指標だけを作成してみてください。1時間もあればHubSpot上で設定完了できます。経営会議で「数字で議論する文化」が生まれれば、営業・マーケのダッシュボードも自然と必要になります。
HubSpotのダッシュボード設計や運用でお困りの方は、Platinum Partnerとして50社以上の支援実績を持つUniteXにお気軽にご相談ください。







