

- 結論:入力負荷・自動化・活用の仕組みを見直す
- なぜ営業はHubSpotに入力しないのか? — 5つの構造的原因
- 【フェーズ1】今日からできる施策(入力負荷を下げる)
- 【フェーズ2】仕組みで入力率を上げる(ワークフロー・自動化)
- 【フェーズ3】入力する文化をつくる(評価・活用・教育)
結論:入力負荷・自動化・活用の仕組みを見直す
営業がHubSpotに入力してくれないときは、入力の負担と、入力した情報を使う場面を確認することから始めます。
入力率の改善を検討する際は、次の3つの方針で運用を整理します。必要な項目数や改善目標は、営業プロセスと現在の入力状況に合わせて決めましょう。
- 入力項目を「本当に使うもの」だけに絞る(会議・判断・次の行動に使う項目を選ぶ)
- 手入力を減らす仕組みを先に作る(メール連携・ワークフロー自動化)
- 入力した人が得をする設計にする(評価連動・会議での活用)
この記事では、入力率を上げる10の施策を「すぐできる」→「仕組み化」→「文化づくり」の3フェーズに分けて、優先順位つきで解説します。

なぜ営業はHubSpotに入力しないのか? — 5つの構造的原因
対策に入る前に、原因を正しく理解しましょう。「やる気がない」で片付けると、的外れな対策を打ってしまいます。
原因1: 入力項目が多すぎる
項目が多いだけでなく、入力の目的やタイミングが曖昧だと、担当者の負担になります。誰が、いつ、何の判断に使う項目なのかを整理し、未入力の多い項目から確認しましょう。適切な項目数は業務によって異なり、数を減らすだけで一定の入力率が得られるわけではありません。
原因2: 入力しても「自分の得」にならない
営業にとって、HubSpotへの入力は「上司のための報告作業」にしか見えません。入力したデータが自分の案件管理や次のアクション判断に役立たない限り、モチベーションは生まれません。
原因3: 入力に時間がかかりすぎる
入力時間は、項目数だけでなく、二重入力・画面の切り替え・情報を探す時間にも左右されます。まず担当者の作業を確認し、入力にかかる時間と重複作業を測りましょう。Salesforceの調査「セールス最新事情(第5版)」では、営業担当者が実際の販売活動に使う時間は週の労働時間の28%と報告されています。
出典:Salesforce「セールス最新事情(第5版)」の発表。2022年8月24日〜9月30日に実施した、世界の営業関係者7,775人への調査に基づく数値です。日本だけの現在値や、UniteXの支援成果を示すものではありません。
原因4: 入力しなくても困らない
入力の有無が評価にも給与にも直結しない場合、「入力すると手間が増えるだけ、入力しなくても困らない」という非対称が続きます。この状態ではCRMは更新されない台帳になります。
原因5: 何を入力すればいいか分からない
「商談メモを書いてください」と言われても、何をどの粒度で書けばいいのか分からない。入力ルールが曖昧なまま「とにかく入力して」と言われるのは、営業にとってストレスでしかありません。
【フェーズ1】今日からできる施策(入力負荷を下げる)
まずは営業の手間を物理的に減らすことから始めます。ここを飛ばして「入力を義務化する」のは逆効果です。
施策1: 入力必須項目を必要最小限に絞る
最優先で取り組むべき施策です。
HubSpotの取引(Deal)プロパティを見直し、本当に意思決定に使う項目だけを残します。
残すべき項目の例(商談パイプライン):
| 項目 | 理由 |
|---|---|
| 取引名 | 案件の識別 |
| 取引金額 | 売上予測に必須 |
| クローズ予定日 | パイプライン管理に必須 |
| 取引ステージ | 進捗の可視化 |
| 次のアクション(テキスト1行) | フォローの質を上げる |
| 失注理由(クローズ時のみ) | 改善データの蓄積 |
削除・任意にすべき項目の例:
- 競合情報(テキスト自由記述)→ 選択式に変更するか削除
- 業界分類 → 会社レコードに持たせて取引には不要
- 導入時期 → クローズ予定日で代用可能
HubSpotのパイプライン設定では、レコードの作成時や特定ステージへの移動時に表示するプロパティを設定できます。ステージごとに必要な情報を入力する設計を検討しましょう。条件付きで必須にする機能はStarter・Professional・Enterpriseの対象契約と設定権限が必要です。設定手順・対象はHubSpot公式のパイプライン設定ガイドで確認できます。
施策2: Gmail/Outlook連携でメールの二重入力を減らす
GmailやOffice 365などの個人用Eメールを接続し、HubSpot Sales拡張機能・アドインやCRMからの送信を利用すると、条件に合うメールをCRMに記録できます。接続するだけで全メールが記録されるとは限らないため、記録ルールと対象を確認します。
「返信のみを記録」の設定では、元メールをCRMから送るか、拡張機能・アドインで記録を選んで送るなどの条件があります。新規受信メールや記録除外リストの扱いも、HubSpot公式のメール記録条件を確認してください。
テスト用の送受信で記録を確認してから運用を開始し、二重入力がどれだけ減ったかを測定します。
施策3: モバイルアプリで「その場入力」を可能にする
商談後にHubSpotのモバイルアプリで取引ステージと次のアクションを更新する運用を検討します。更新のタイミングと必要項目を決め、帰社後のまとめ入力を減らしていきます。
担当者の端末で必要なレコードにアクセスできるか、対象のプロパティを編集できるかを確認します。操作方法を共有し、外出先での入力にかかる時間や困りごとを確認しましょう。
【フェーズ2】仕組みで入力率を上げる(ワークフロー・自動化)
フェーズ1で手間を減らしたら、次は記録・タスク作成など、自動化できる処理を選びます。対象プランと設定条件を確認し、担当者による確認が必要な作業も残して設計します。

図は連携・自動化を組み合わせるイメージです。メール記録、タスク生成、予約、録音はそれぞれ契約プラン・シート・接続・権限・録音設定等の条件が異なります。すべてが無条件で連続実行されることを示すものではありません。
施策4: ワークフローで「次のタスク」を自動生成する
取引ステージの変更をきっかけに、次のタスクを自動で作成する設定を検討します。利用できるアクションは契約によって異なり、ワークフローエディター全体の利用には対象製品のProfessional・Enterprise契約が必要です。公式のワークフロー作成ガイドで対象を確認してください。
設定例:
- 「提案書送付済み」→ 3日後に「フォローアップ電話」タスクを自動作成
- 「見積もり提出」→ 1週間後に「検討状況の確認」タスクを自動作成
- 「口頭内諾」→ 即日「契約書送付」タスクを自動作成
担当者・期限・再登録条件を設定し、タスクが重複しないかテストします。営業が次にやるべきことを確認できるように、日常のタスク確認の流れも合わせて決めましょう。
施策5: ミーティングリンクでスケジュール入力を自動化
HubSpotのミーティング予約ページとカレンダー連携を使い、予約・予定登録の重複作業を減らす運用を検討します。予約や同期には接続先のカレンダーと設定条件が関係します。
GoogleカレンダーやOffice 365との同期設定、記録先のコンタクト、予約変更時の動作をテストします。HubSpot公式のカレンダー・予約ページ設定を確認し、同期対象外の予定をどう記録するかも決めておきましょう。
施策6: 通話ログの自動記録を設定する
HubSpotの通話機能や対応する連携ツールを使い、通話履歴・録音・メモをどこに記録するかを整理します。記録される項目や自動化できる範囲は、ツールと設定によって異なります。
録音の文字起こし・分析には、Sales HubまたはService HubのProfessional・Enterpriseシートなどの利用条件があります。AI要約にも録音・AI機能の設定が必要です。HubSpot公式の録音・文字起こしガイドを確認してください。要約の内容を確認し、商談の判断や次のアクションに必要な情報は担当者が補足します。
【フェーズ3】入力する文化をつくる(評価・活用・教育)
仕組みを整えたら、最後は「入力した人が得をする」文化を作ります。
施策7: 営業会議をHubSpotのデータで回す
入力したデータを使う場面を、日常の営業活動の中に作る施策です。
週次の営業会議で、各営業のパイプラインレポートをHubSpotの画面共有で確認する運営に変えます。
ポイント:
- Excelの報告資料を廃止し、HubSpotのダッシュボードに一本化する
- 「HubSpotに入っていない案件は存在しない」というルールを明言する
- 入力していない人は報告できない → 会議前に入力する習慣がつく
会議運営を変える前後で、同じ定義・対象・期間の入力状況を比較します。未入力の件数だけでなく、次のアクションが判断できる情報になっているかも確認してください。
施策8: 入力率をKPIにして可視化する
まず何を入力済みと数えるかを定義します。例えば「次のアクションが入力された対象取引数 ÷ 対象取引の総数 × 100」で記入率を確認できます。対象ステージ、担当者、集計期間、対象外とする取引を揃えて比較しましょう。利用できるレポート機能は契約により異なるため、必要に応じてレコード一覧から確認する方法も選べます。
計測すべき指標:
- 取引の更新頻度(週に何回ステージを動かしたか)
- アクティビティログの件数(メール・通話・ミーティング)
- 取引の「次のアクション」欄の記入率
確認結果は改善点の発見に使います。担当者ごとの業務量や案件段階の違いも確認し、項目の分かりにくさ、重複入力、操作上のつまずきをチームで解消しましょう。
施策9: 入力ルールを3行でマニュアル化する
長い運用マニュアルは誰も読みません。入力ルールは3行で書ける粒度に絞ります。
入力ルールの例:
1. 商談が発生したら取引を作成する(取引名・金額・クローズ予定日)
2. 状況が変わったらステージを動かす(週1回以上)
3. 商談後は「次のアクション」を1行書く(何を・いつまでに)
この3つは運用ルールを整理するための例です。パイプライン管理や売上予測に必要な情報は自社の業務に合わせて確認し、入力結果を会議で活用しながらルールを見直します。

施策10: 成功体験を共有する
入力したデータが実際の成果につながった事例を、チーム内で共有します。
共有する内容の例:
- 次のアクション欄のメモが、フォローの判断にどう役立ったか
- パイプラインレポートを見て、注力する案件をどう選んだか
- 商談期間のデータから、提案のタイミングをどう見直したか
実際に確認できた内容を共有し、数値を示すときは対象・測定期間・比較条件を添えます。
抽象的な「CRM活用のメリット」より、身近な同僚の具体的な成功事例のほうが行動変容を促します。
10施策の実行ロードマップ
すべてを一度に実行する必要はありません。以下の順番で、運用の準備と確認結果に合わせて進めます。各フェーズの期間は、対象人数・現在の設定・利用プラン・社内の確認体制によって変わります。
| フェーズ | 着手の目安 | 施策 | 確認すること |
|---|---|---|---|
| フェーズ1(負荷削減) | 最初に着手 | ① 項目削減 ② メール連携 ③ モバイル導入 | 不要な項目と二重入力、入力にかかる時間 |
| フェーズ2(自動化) | 対象と設定条件を確認後 | ④ タスク自動生成 ⑤ ミーティングリンク ⑥ 通話自動記録 | 記録漏れ・タスクの重複・例外時の手作業 |
| フェーズ3(文化づくり) | 運用開始後に継続 | ⑦ 会議運営変更 ⑧ KPI可視化 ⑨ ルール簡素化 ⑩ 成功事例共有 | 同じ定義で計測した記入率と会議での活用状況 |
よくある失敗パターンとその回避策
失敗1: いきなり「入力を義務化」する
入力の手間を減らす前に義務化すると、営業の反発を招きます。まずフェーズ1で負荷を下げてから義務化に進みましょう。
失敗2: 入力項目を増やし続ける
「あれも知りたい、これも知りたい」と項目を追加し続けると、入力の負担が増えます。「誰が、何の判断にこの項目を使っているか」を定期的に棚卸ししましょう。非表示・任意化・削除の前に、レポートや自動化、外部連携で参照されていないかを確認します。
失敗3: データを活用しない
入力されたデータが営業会議でもレポートでも使われない状態が続くと、「入力しても意味がない」という認識が定着します。データの活用シーンを先に設計してから入力を求めましょう。
まとめ:入力率を上げる3つの原則
| 原則 | 具体的なアクション |
|---|---|
| 入力の手間を減らす | 必要項目の整理・メール連携・モバイル活用 |
| 入力を自動化する | ワークフロー・ミーティングリンク・通話ログ |
| 入力した人が得をする仕組みにする | 会議での活用・KPI可視化・成功事例の共有 |
「営業が入力してくれない」ときは、CRMの運用設計と現場の作業を合わせて見直しましょう。改善前の状態を測り、入力負荷・自動化・データ活用を順に整え、同じ条件で効果を確認することが大切です。
もしHubSpotの運用設計にお悩みであれば、元HubSpot社員が在籍するUniteXにご相談ください。入力率の改善から、ワークフロー設計、営業会議の運営改善まで、伴走型で支援します。
よくある質問(FAQ)
Q1: HubSpotの入力率はどのくらいが合格ラインですか?
一律の合格ラインはありません。まず、営業判断に必要な項目と入力期限を決め、対象レコードのうち条件を満たした件数を計測します。現在値と未入力による業務上の影響を確認し、自社に必要な目標を設定しましょう。
Q2: 営業が3人しかいない少人数チームでも同じ対策が有効ですか?
少人数でも、入力負荷の整理・自動化・会議での活用という考え方を使えます。人数だけで効果や習慣化までの期間は決まりません。各担当者の作業を確認し、少ない範囲から試して、負担と記入状況を見ながら調整しましょう。
Q3: Sales Hub無料プランでも入力率改善はできますか?
入力項目やルールの棚卸し、会議での活用は、プラン変更の前に取り組めます。メール記録やカレンダー連携は接続・権限・設定条件を確認してください。ワークフローエディター全体は対象製品のProfessional・Enterprise向けですが、パイプラインの簡易自動化は契約やアカウントの画面によって利用範囲が異なります。施策4〜6がすべて同じプラン条件というわけではありません。公式のパイプライン自動化ガイドで自社環境の対象機能を確認しましょう。
Q4: Salesforceでも同じアプローチは使えますか?
入力項目を整理し、記録を自動化し、会議でデータを活用する考え方は、Salesforceを含む他のCRMでも検討できます。利用できる機能や設定方法は製品・契約によって異なります。製品名だけで入力率改善の成否を判断せず、現在の業務と設定を確認しましょう。
Q5: 入力率が改善しない営業メンバーへの対応は?
まず「どの作業で困っているか」を個別に確認してください。入力方法や画面の分かりにくさだけでなく、重複入力・必要情報の不足・入力時間・活用場面の不明確さなどを確認します。原因を整理し、操作説明と運用の見直しを組み合わせて対応しましょう。
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