


大手IT企業で3年半にわたり大手企業向け営業に従事した後、Sansan株式会社にて営業・カスタマーサクセスを経験。その後HubSpot Japanに入社し、提案営業として数百社のHubSpot導入を推進。2024年に株式会社UniteXを創業。夫婦ともにHubSpot出身で、家族でHubSpotにフルコミットする体制のもと、九州エリア初のHubSpot Gold Solutions Partner認定を経て、西日本エリア初のPlatinum Solutions Partnerに認定。AI×CRMで企業の事業変革を支援している。
営業がHubSpotに入力してくれない問題は、精神論では解決しません。
私たちがHubSpot Platinum Partnerとして支援してきた企業の中で、入力率を30%台から80%超に引き上げたケースに共通していたのは、次の3つの方針でした。
この記事では、入力率を上げる10の施策を「すぐできる」→「仕組み化」→「文化づくり」の3フェーズに分けて、優先順位つきで解説します。

対策に入る前に、原因を正しく理解しましょう。「やる気がない」で片付けると、的外れな対策を打ってしまいます。
初期設定で入力項目が20以上あるCRM環境では、3ヶ月以内に入力率が50%を下回るケースがほとんどです。一方、5〜8項目に絞った組織では入力率80%以上を半年間維持できているというデータがあります。
営業にとって、HubSpotへの入力は「上司のための報告作業」にしか見えません。入力したデータが自分の案件管理や次のアクション判断に役立たない限り、モチベーションは生まれません。
CRM入力に1日30分を超えると入力率が急激に低下し、15分以内であれば80%以上を維持できるという調査結果があります。日本の営業担当者が実際の営業活動に使える時間は週のわずか32%。残りの68%は入力や会議などのノンコア業務に費やされています。
入力の有無が評価にも給与にも直結しない場合、「入力すると手間が増えるだけ、入力しなくても困らない」という非対称が続きます。この状態ではCRMは更新されない台帳になります。
「商談メモを書いてください」と言われても、何をどの粒度で書けばいいのか分からない。入力ルールが曖昧なまま「とにかく入力して」と言われるのは、営業にとってストレスでしかありません。
まずは営業の手間を物理的に減らすことから始めます。ここを飛ばして「入力を義務化する」のは逆効果です。
最優先で取り組むべき施策です。
HubSpotの取引(Deal)プロパティを見直し、本当に意思決定に使う項目だけを残します。
残すべき項目の例(商談パイプライン):
| 項目 | 理由 |
|---|---|
| 取引名 | 案件の識別 |
| 取引金額 | 売上予測に必須 |
| クローズ予定日 | パイプライン管理に必須 |
| 取引ステージ | 進捗の可視化 |
| 次のアクション(テキスト1行) | フォローの質を上げる |
| 失注理由(クローズ時のみ) | 改善データの蓄積 |
削除・任意にすべき項目の例:
- 競合情報(テキスト自由記述)→ 選択式に変更するか削除
- 業界分類 → 会社レコードに持たせて取引には不要
- 導入時期 → クローズ予定日で代用可能
HubSpotの管理画面で「プロパティの設定」→「条件付き必須プロパティ」を使えば、ステージ移動時だけ必須入力にする設計が可能です。これなら初回作成時の負荷が大幅に下がります。
HubSpotのメール連携を有効化すると、送受信メールが自動でコンタクトのタイムラインに記録されます。営業が「メールした内容をHubSpotにも書く」二重作業をしなくて済みます。
さらに、HubSpotのAIがメール署名から会社名・役職・電話番号を自動抽出し、空のプロパティに補完します。設定は「設定」→「全般」→「Eメール」から数クリックで完了します。
これだけで、営業の体感入力量は半分以下になります。
商談直後の移動中に、スマホからHubSpotアプリを開いて取引ステージと次のアクションだけ更新する。この30秒の習慣がつけば、「帰社後にまとめて入力」のハードルがなくなります。
HubSpotモバイルアプリでは、名刺スキャンでコンタクトの自動作成も可能です。営業担当に「このアプリだけ入れておいて」と伝えましょう。
フェーズ1で手間を減らしたら、次はHubSpotの自動化機能を使って「入力しなくても情報が溜まる」状態を作ります。

取引ステージが変わったら、次にやるべきタスクを自動で作成するワークフローを組みます。
設定例:
- 「提案書送付済み」→ 3日後に「フォローアップ電話」タスクを自動作成
- 「見積もり提出」→ 1週間後に「検討状況の確認」タスクを自動作成
- 「口頭内諾」→ 即日「契約書送付」タスクを自動作成
これにより、営業はHubSpotを開けば「今日やるべきこと」が一覧で見える状態になります。入力が「報告」ではなく「自分の仕事を楽にするツール」に変わる瞬間です。
HubSpotのミーティングリンク機能を使えば、顧客がカレンダーから日時を選ぶだけで、HubSpotにミーティング予定が自動で記録されます。
営業が手動でGoogleカレンダーとHubSpotの両方に予定を入れる手間がなくなり、「ミーティングのログを入力し忘れた」問題も解消します。
HubSpotの通話機能(またはAircall・Zoom Phone等の連携ツール)を使えば、通話内容がタイムラインに自動記録されます。
Sales Hub ProfessionalプランではAIによる通話要約の自動生成も利用可能です。営業が通話後にメモを書く必要がなくなります。
仕組みを整えたら、最後は「入力した人が得をする」文化を作ります。
最も効果が高い施策の1つです。
週次の営業会議で、各営業のパイプラインレポートをHubSpotの画面共有で確認する運営に変えます。
ポイント:
- Excelの報告資料を廃止し、HubSpotのダッシュボードに一本化する
- 「HubSpotに入っていない案件は存在しない」というルールを明言する
- 入力していない人は報告できない → 会議前に入力する習慣がつく
ある支援先企業では、この運用に切り替えた翌月に入力率が35%→72%に跳ね上がりました。
HubSpotのカスタムレポートで、営業担当者別の入力率ダッシュボードを作成します。
計測すべき指標:
- 取引の更新頻度(週に何回ステージを動かしたか)
- アクティビティログの件数(メール・通話・ミーティング)
- 取引の「次のアクション」欄の記入率
ダッシュボードを営業チーム全員が見える場所(SlackチャンネルやTV画面)に表示することで、自然と「自分だけ入力していない」状態が目立つようになります。
長い運用マニュアルは誰も読みません。入力ルールは3行で書ける粒度に絞ります。
入力ルールの例:
1. 商談が発生したら取引を作成する(取引名・金額・クローズ予定日)
2. 状況が変わったらステージを動かす(週1回以上)
3. 商談後は「次のアクション」を1行書く(何を・いつまでに)
この3つだけ守ってもらえれば、パイプライン管理と売上予測は十分に機能します。

入力したデータが実際の成果につながった事例を、チーム内で共有します。
効果的な共有例:
- 「Aさんが次のアクション欄のメモをもとにタイミングよくフォローし、失注しかけた案件を受注に戻した」
- 「パイプラインレポートを見て注力案件を絞った結果、月の受注件数が1.5倍になった」
- 「入力データから商談期間の平均を分析し、提案書の送付タイミングを前倒しした結果、成約率が上がった」
抽象的な「CRM活用のメリット」より、身近な同僚の具体的な成功事例のほうが行動変容を促します。
すべてを一度に実行する必要はありません。以下の順番で、1ヶ月ごとに1フェーズ進めるのが現実的です。
| フェーズ | 期間 | 施策 | 期待効果 |
|---|---|---|---|
| フェーズ1(負荷削減) | 1〜2週目 | ① 項目削減 ② メール連携 ③ モバイル導入 | 入力の体感負荷が半減 |
| フェーズ2(自動化) | 3〜4週目 | ④ タスク自動生成 ⑤ ミーティングリンク ⑥ 通話自動記録 | 手入力の量が3分の1に |
| フェーズ3(文化づくり) | 2ヶ月目〜 | ⑦ 会議運営変更 ⑧ KPI可視化 ⑨ ルール簡素化 ⑩ 成功事例共有 | 入力率80%超の定着 |
入力の手間を減らす前に義務化すると、営業の反発を招きます。まずフェーズ1で負荷を下げてから義務化に進みましょう。
「あれも知りたい、これも知りたい」と管理者が項目を追加し続けると、初期設計の5〜8項目がいつの間にか20項目に戻ります。四半期ごとに「本当にこの項目を見ているか」を棚卸ししましょう。使われていない項目は非表示にします。
入力されたデータが営業会議でもレポートでも使われない状態が続くと、「入力しても意味がない」という認識が定着します。データの活用シーンを先に設計してから入力を求めましょう。
| 原則 | 具体的なアクション |
|---|---|
| 入力の手間を減らす | 項目を5〜8個に絞る・メール連携・モバイル活用 |
| 入力を自動化する | ワークフロー・ミーティングリンク・通話ログ |
| 入力した人が得をする仕組みにする | 会議での活用・KPI可視化・成功事例の共有 |
「営業が入力してくれない」は、営業個人の問題ではなくCRM運用設計の問題です。仕組みを変えれば、入力率は確実に上がります。
もしHubSpotの運用設計にお悩みであれば、元HubSpot社員が在籍するUniteXにご相談ください。入力率の改善から、ワークフロー設計、営業会議の運営改善まで、伴走型で支援します。
目安として80%以上が合格ラインです。100%を目指す必要はありません。80%の入力率があれば、パイプライン管理と売上予測は十分に機能します。まずは現状の入力率を計測し、月ごとの改善目標を設定しましょう。
はい、むしろ少人数チームのほうが効果が出やすいです。全員の行動が見えやすいため、フェーズ3の「会議での活用」が即効性を持ちます。3人なら1〜2週間で入力の習慣化が可能です。
無料プランでも施策1(項目削減)、施策2(メール連携)、施策3(モバイルアプリ)、施策9(ルール簡素化)は実行可能です。ワークフローの自動化(施策4〜6)はProfessionalプラン以上が必要ですが、Starterプランでも簡易オートメーション(タスクの自動生成など)は利用できます。まずは無料でできることから始めるのが正解です。
基本的な考え方(項目削減・自動化・会議活用)はCRM共通です。ただし、HubSpotはUIがシンプルなため営業の受容性が高く、入力率改善の成功率が高い傾向にあります。SalesforceからHubSpotへの乗り換えを検討される企業も増えています。
まず「なぜ入力しないのか」を1on1で確認してください。多くの場合、入力方法が分からない・入力画面の場所が分からないといった操作面の問題です。ツールの問題を意識の問題にすり替えないことが大切です。






