

大手IT企業で3年半にわたり大手企業向け営業に従事した後、Sansan株式会社にて営業・カスタマーサクセスを経験。その後HubSpot Japanに入社し、提案営業として数百社のHubSpot導入を推進。2024年に株式会社UniteXを創業。夫婦ともにHubSpot出身で、家族でHubSpotにフルコミットする体制のもと、九州エリア初のHubSpot Gold Solutions Partner認定を経て、西日本エリア初のPlatinum Solutions Partnerに認定。AI×CRMで企業の事業変革を支援している。
HubSpotを導入して1年経つのに成果が出ない場合、まず確認すべきは「データ品質」「自動化設定」「営業の定着度」「レポートと意思決定の連動」の4領域です。 多くの企業では、HubSpotの初期設定は完了しているものの、運用ルールの未整備やデータの汚れが蓄積し、ツールのポテンシャルの20〜30%しか活用できていません。以下の30項目チェックリストを使えば、自社のHubSpotが「どこで詰まっているか」を15分で特定できます。
この記事では、元HubSpot社員がカスタマーサクセス現場で実際に使っていた診断フレームワークをベースに、HubSpot Platinum Solutions Partnerとして50社以上を支援してきたUniteXの知見を加え、具体的な改善アクションまで解説します。
HubSpot導入後に「成果が出ない」と感じる企業の多くは、ツールの問題ではなく「運用設計」の問題を抱えています。
HubSpotのカスタマーサクセスチームが社内で使っていた活用度スコアリングでは、導入1年後の企業を以下の3段階で分類していました。
| レベル | 状態 | 割合(目安) |
|---|---|---|
| レベル1:入力だけ | コンタクト登録・メモ入力のみ。自動化・レポート未活用 | 約40% |
| レベル2:機能は使うが成果不明 | ワークフローやフォームを設定済み。だがKPIと未連動 | 約35% |
| レベル3:データドリブン運用 | パイプライン・レポート・自動化が連動し、経営判断に活用 | 約25% |
レベル1〜2に該当する企業は、以下のチェックリストで「どこが詰まっているか」を特定することが改善の第一歩です。
チェックリストは「データ品質」「自動化・ワークフロー」「営業定着・入力率」「レポート・意思決定」の4領域に分かれています。各項目に該当する場合は改善が必要です。
データが汚れていると、どんなに高度な自動化やレポートを組んでも正しい結果が出ません。HubSpotのパフォーマンスの80%はデータ品質で決まると言っても過言ではありません。
1. コンタクトの重複率が5%を超えている
HubSpotの「データ品質コマンドセンター」(Operations Hub)または手動のマージ機能で確認できます。重複率5%超は危険信号です。名寄せルールを決め、月1回のクリーニングを習慣化してください。
2. 使われていないカスタムプロパティが20個以上ある
設定 > プロパティで「値なし100%」のプロパティを確認。使われていないプロパティはレポートの精度を下げ、入力画面を煩雑にします。不要なものはアーカイブしましょう。
3. ライフサイクルステージが正しく運用されていない
「リード」「MQL」「SQL」「顧客」の定義があいまい、または手動更新に依存していませんか?ライフサイクルステージはワークフローで自動遷移させるのが基本です。
4. リードソース(元のソース)が「オフライン」や「不明」ばかり
フォームやランディングページがHubSpotに統合されていないと、リードソースが追跡できません。どのチャネルからリードが来ているか分からなければ、マーケティング投資の判断ができません。
5. 会社レコードとコンタクトの紐付け(アソシエーション)が不完全
コンタクトが会社に紐付いていないと、ABM(アカウントベースドマーケティング)やパイプライン分析が機能しません。自動アソシエーションルールを設定し、メールドメインベースで紐付けましょう。
6. 電話番号・住所などのフォーマットがバラバラ
「03-1234-5678」「0312345678」「+81312345678」が混在していませんか?入力ルールかバリデーションワークフローで統一が必要です。
7. 「その他」「未分類」が選択肢のトップに来るプロパティがある
ドロップダウンの選択肢設計が現場の実態に合っていない証拠です。現場ヒアリングのうえ選択肢を再設計してください。
8. 1年以上更新のないコンタクトが全体の30%を超えている
いわゆる「死んだデータ」。マーケティングコンタクト課金にも影響します。再エンゲージメントキャンペーンを打つか、非マーケティングコンタクトに移行してコスト最適化を図りましょう。

HubSpotの真価は自動化にあります。しかし「作りっぱなし」のワークフローは逆効果になることも。
9. アクティブなワークフローの数を把握していない
ワークフロー画面で「アクティブ」フィルタをかけて確認。数十本が放置されている企業は珍しくありません。四半期に1回の棚卸しが必須です。
10. お問い合わせフォーム送信後の自動返信メールが設定されていない
基本中の基本ですが、意外と漏れている企業が多いポイントです。自動返信がないと、リードは「届いたのか不安」になり離脱します。
11. リード担当者の自動割り当てルールがない
手動でリードを営業に振り分けていると、対応速度が落ちます。リードの属性(地域・業種・規模)に応じたラウンドロビンまたはルールベースの自動割り当てを設定しましょう。
12. MQL→SQLの遷移条件が定義されていない
マーケティングと営業の間で「どうなったらMQLからSQLに進むのか」の合意がないと、パイプラインが詰まります。スコアリングか行動条件(資料DL+料金ページ閲覧など)で定義しましょう。
13. SLA通知(対応期限アラート)が設定されていない
リードが来てから初回コンタクトまでの目標時間(例: 5分以内)を設定し、超過したらマネージャーに通知するワークフローがありますか?対応速度は成約率に直結します。
14. ナーチャリングメールが「一斉配信」のままになっている
全リードに同じメールを送っていませんか?ライフサイクルステージや興味関心に応じたセグメント配信に切り替えることで、開封率が平均2倍に改善します。
15. ワークフローのエラー通知を確認していない
ワークフロー画面の「要確認」タブを定期的にチェックしていますか?アソシエーションの欠落やプロパティ変更による実行エラーが放置されていることが多いです。
16. フォームの項目数が10個を超えている
フォームの入力項目が多いほどコンバージョン率は下がります。初回接点では3〜5項目に絞り、プログレッシブプロファイリングで段階的に情報を取得するのがベストプラクティスです。
HubSpot導入企業の最大の課題は「営業が使ってくれない」問題です。ツールではなく運用設計で解決します。
17. 取引(Deal)の作成・更新を営業が行っていない
パイプライン画面が空、または数ヶ月前のデータのまま。営業マネージャーがパイプラインレビューをHubSpot上で行う習慣がなければ、入力は定着しません。
18. 必須入力項目が多すぎる(7項目以上)
入力のハードルが高いと営業は入力を避けます。必須項目は3〜5個に絞り、残りは任意にしましょう。「入力させる」のではなく「入力したくなる」設計が重要です。
19. モバイルアプリが活用されていない
外回りの営業にとって、PCを開いてHubSpotに入力するのは負担です。HubSpotモバイルアプリを使えば、商談直後に音声メモやタスク登録ができます。
20. 営業会議でHubSpotの画面を使っていない
Excel集計やPowerPointで会議資料を作っている場合、HubSpotのダッシュボードを会議の中心に据えましょう。「HubSpotに入力しないと会議で話せない」状態を作ることが定着の鍵です。
21. 取引ステージの定義が営業チーム内で統一されていない
「商談中」の定義が人によって違うと、パイプラインの予測精度が崩壊します。各ステージの進行条件を明文化し、全員で合意してください。
22. アクティビティ(メール・電話・メモ)のログ率が50%未満
Gmail/Outlook連携を有効にして、メールを自動ログする設定にしていますか?手動ログに頼ると記録率は確実に下がります。
23. 営業へのHubSpotトレーニングが導入時の1回だけ
導入時の研修だけでは定着しません。月1回の「Tips共有会」や、新機能リリース時のミニ研修を継続的に実施することが重要です。

データが溜まっていても、レポートが経営判断に使われていなければ意味がありません。
24. 「誰も見ていないダッシュボード」が3つ以上ある
HubSpotのダッシュボード画面で最終閲覧日を確認。誰も見ていないダッシュボードは削除するか、見る人のニーズに合わせて再設計しましょう。
25. 経営会議で使うレポートをHubSpot外で手作業で作成している
Excelに手でデータを集計している場合、HubSpotのカスタムレポート機能を活用できていません。データのエクスポート+手作業は、リアルタイム性と正確性の両方を失います。
26. リードから受注までのコンバージョン率を即答できない
パイプライン全体の転換率(リード→MQL→SQL→商談→受注)を追跡するファネルレポートがありますか?ボトルネックがどのステージにあるかが分からなければ、改善の打ち手が見えません。
27. チャネル別のROIを計測していない
オーガニック検索・広告・紹介・展示会など、チャネルごとのリード数だけでなく、受注金額ベースのROIまで追跡していますか?HubSpotのアトリビューションレポートを使えば、どのチャネルに投資すべきか判断できます。
28. レポートの更新頻度が月1回以下
月次レポートだけでは、問題の発見が遅れます。重要KPI(リード数・商談数・受注金額)は週次でレビューし、異常値があればすぐに原因を調査する体制を整えましょう。
29. マーケティングとセールスで見ているKPIが違う
マーケティングは「リード数」、営業は「受注金額」しか見ていない状態では、部門間の溝が生まれます。両者が共通で見る「SQLの数と質」を橋渡し指標として設定してください。
30. HubSpotのデータに基づく意思決定を経営層がしていない
最終的なゴールは、HubSpotのデータが経営判断の根拠になることです。「なんとなくこのチャネルが良さそう」ではなく「HubSpotのデータでROIが最も高いのはこのチャネルだから、ここに予算を寄せる」という判断ができていますか?
| 該当数 | 診断結果 | 推奨アクション |
|---|---|---|
| 0〜5項目 | 健全。細かな改善で成果を最大化できる段階 | 該当項目を個別に改善 |
| 6〜15項目 | 要注意。基盤は整っているが運用に穴がある | 優先度をつけて四半期で改善計画を実行 |
| 16〜25項目 | 危険。導入効果がほぼ出ていない可能性 | 運用設計の見直しが必要。外部パートナーの支援を検討 |
| 26〜30項目 | 緊急。再構築レベル | HubSpotの導入目的から再定義。専門家による診断を推奨 |
16項目以上に該当した場合、自社だけで改善するのは困難です。HubSpot Platinum Solutions Partnerに相談し、第三者の視点で全体を診断することをおすすめします。
チェックリストで課題が見つかったら、以下の順序で改善を進めましょう。
すべての改善の土台です。重複コンタクトのマージ、不要プロパティの削除、ライフサイクルステージの再定義から始めてください。データが汚れたままワークフローを直しても、意味がありません。
ワークフローの棚卸し、リード割り当ての自動化、営業の入力ルール簡素化を進めます。営業が「入力したら自分にもメリットがある」と感じる仕組み(例: 自動でタスクが消える、レポートで成績が可視化される)を作ることが成功の鍵です。
ダッシュボードを経営会議・営業会議の中心に据え、データに基づく意思決定の文化を定着させます。まずは「週次パイプラインレビュー」を1つだけ始めるのが効果的です。

はい、この記事の30項目チェックリストを使えば自社でも15〜30分で簡易診断が可能です。 ただし、ワークフローの設計ミスやプロパティの構造的な問題は専門知識が必要なため、16項目以上に該当した場合はHubSpotパートナーによる本格的な診断を受けることをおすすめします。
一般的に、HubSpotの導入効果が数字に現れるまでは3〜6ヶ月が目安です。 ただしこれは「正しく運用している場合」の話です。運用設計に問題があると、1年経っても成果が出ないケースは珍しくありません。チェックリストで課題を特定し、優先度をつけて改善することが重要です。
最優先はデータ品質(領域1)です。 特に「コンタクトの重複」「ライフサイクルステージの未運用」「リードソースの不明」の3つは、他のすべての改善の土台になります。ここが整っていないと、自動化やレポートをいくら改善しても正確な結果が得られません。
HubSpotの「CRM利用レポート」(Sales Hub Professional以上)を使えば、ユーザーごとのログイン頻度・アクティビティログ数・取引更新数などを可視化できます。 また、Operations Hubの「データ品質コマンドセンター」では、プロパティの充填率やデータの健全性スコアを確認できます。
HubSpotパートナーによるポータル診断の相場は、15〜50万円程度です。 診断内容(簡易チェック〜全Hub詳細監査)やレポート範囲によって異なります。UniteXでは、AI Flow無料診断の一環としてHubSpotの活用度診断を無料で提供しています。まずは30項目のセルフチェックを行い、その結果をもとに相談いただくのが最も効率的です。
はい、むしろ小規模企業こそこのチェックリストが有効です。 大企業と違い、小規模企業では1人の管理者がすべてを兼任していることが多く、運用の穴が見えにくくなります。特に領域1(データ品質)と領域3(営業定着)の項目を重点的にチェックしてください。







