


大手IT企業で3年半にわたり大手企業向け営業に従事した後、Sansan株式会社にて営業・カスタマーサクセスを経験。その後HubSpot Japanに入社し、提案営業として数百社のHubSpot導入を推進。2024年に株式会社UniteXを創業。夫婦ともにHubSpot出身で、家族でHubSpotにフルコミットする体制のもと、九州エリア初のHubSpot Gold Solutions Partnerに認定。AI×CRMで企業の事業変革を支援している。
HubSpot Breezeは、HubSpotのCRMプラットフォーム全体に組み込まれたAI機能群です。2024年のINBOUNDカンファレンス(※HubSpotが毎年開催する世界最大級のマーケティング・営業カンファレンス。新機能や戦略の発表の場として知られる)で正式発表され、2025〜2026年にかけて大幅に機能が拡張されました。
Breezeは3つのレイヤーで構成されています。
Breeze Assistant(旧Copilot)——HubSpot内の日常業務をサポートするAIアシスタント。メール要約、顧客情報確認、フォローアップ下書きなど。Web検索・メモリ機能・Slack連携にも対応。
Breeze Agents——自律的に動くAIチームメイト。15以上のエージェントが、コンテンツ作成・見込み客リサーチ・カスタマーサポートの自動対応まで、複数ステップのワークフローを自動化。
Breeze Intelligence——CRMデータの自動エンリッチメント、バイヤーインテント検出、予測リードスコアリング。2億件以上の企業・バイヤープロファイルを活用。
一見すると非常に強力なAI基盤ですが、ここで一つ、多くの解説記事が触れない重要な事実があります。
Breezeには「コアエージェント」と「Marketplaceエージェント」の2種類があります。
エージェントカタログで見た通り、Breezeは豊富なAIエージェント群を備えています。では、汎用LLM(ChatGPT・Claude・Gemini)ではなくBreezeを使うべき理由はどこにあるのでしょうか。
2026年現在、ChatGPTやClaude CodeもMCP経由でHubSpotのCRMデータを読み書きできるようになっており、CRMアクセス自体はBreezeだけの強みではなくなりました。
ただし、BreezeはHubSpotの画面内で完結する点が異なります。別のアプリを開かず、普段使っているCRMの画面上でそのままAIエージェントが動く。日常業務の導線を変えずにAIを組み込めるのは、現場への浸透しやすさという面で強みです。
Claude CodeやChatGPTがMCP経由でCRMを操作できるようになった今でも、Breezeには明確な強みが残っています。それは「人がいなくても24時間自律的に動き続ける」点です。
Claude CodeやChatGPTでのCRM操作は、基本的に「人が指示を出す → AIが実行する」という対話型です。一方、Breeze Customer Agentは人の指示なしにWebサイト訪問者に自動対応し、リード選別→ミーティング予約→CRM更新まで実行します。Prospecting Agentはバイヤーインテントを検出して自動でアウトリーチメールを作成・送信します。
さらにBreezeはHubSpotのワークフローエンジンにネイティブ統合されているため、「取引ステージが変わったらAgentを起動」「チケットが作成されたら自動分類」といったトリガーベースの自動実行が可能です。これはMCP経由の対話型操作では実現しにくい領域です。
個人のChatGPTアカウントに顧客データを入力する運用は、企業としてのガバナンスリスクが大きいです。BreezeはHubSpotのエンタープライズ基盤上で動作し、以下のセキュリティが担保されます。
HubSpotは2025年にChatGPT・Claudeコネクタをリリースし、2026年にはGeminiも追加。すでに2万社以上で活用されています。HubSpot自身が「Breezeだけでは完結しない」ことを認識し、外部LLMとの共存を設計しています。
ブログ記事を書く → Claude Opus 4.6やChatGPT 5.4で高品質ドラフト作成 → BreezeのContent Agentでブランドボイス最適化・公開
商談を進める → Claude Code + MCP で CRMデータを直接分析・更新、またはBreezeのProspecting Agentで自動アウトリーチ
サポート対応 → Breeze Customer Agentが24時間自動対応(人の介在なし。Breeze単体で十分)
なお、HubSpot内蔵のClaudeコネクタ(Breeze経由)はリードオンリーですが、Claude Code + HubSpot MCPサーバー経由なら読み書き両方が可能です。ChatGPTコネクタは2026年3月に書き込みにも対応しました。「どのルートでCRMに接続するか」で能力が異なる点に注意が必要です。
「Breezeのモデルが旧世代なら、HubSpotのワークフロー内でChatGPT 5.4やClaude Opus 4.6を直接呼び出せばいいのでは?」——これは正しい発想です。実際にHubSpotは「Custom LLMワークフローアクション」という機能を提供しており、OpenAI・Anthropic(Claude)・Google(Gemini)・Cohere・xAI(Grok)のAPIを直接ワークフローに組み込めます。
Custom LLMワークフローアクションは、すべてのHubにおいてEnterpriseプラン限定です。対象は Marketing Enterprise / Sales Enterprise / Service Enterprise / Ops Enterprise / Smart CRM Enterprise / Enterprise Customer Platform。Professionalプラン以下では利用できません。
この機能を使えば、HubSpotのワークフロー内で外部LLMを呼び出し、その出力をCRMレコードの更新やメール送信、タスク作成などの後続アクションに接続できます。具体的なユースケースとしては以下のようなものがあります。
設定は比較的シンプルです。LLMプロバイダーのAPIキーをHubSpotに接続し、ワークフローエディタで「Use a custom LLM」アクションを追加、プロンプトとモデル、温度パラメータなどを設定します。出力は後続のワークフローアクション(レコード編集、通知送信、タスク作成等)で利用できます。
Breezeのプリビルトエージェントは「設定するだけですぐ使える」AIアシスタント。Custom LLMワークフローアクションは「自分でゼロから組み立てる」AIエンジンです。
Breeze Agents = Professional以上で利用可能。HubSpot画面内で完結。ただしモデルは旧世代(GPT-4.x)。
Custom LLMワークフロー = Enterprise限定。APIキー・プロンプト設計が必要。ただし最新モデル(GPT-5.4、Claude Opus 4.6等)を自由に選択でき、自社APIキーで直接課金管理が可能。
つまり、最新LLMの性能をHubSpotのワークフロー内で最大限活用したいなら、Enterpriseプランへのアップグレードが事実上の前提条件になります。Professionalプランのユーザーは、HubSpot外部でLLMを使い、結果を手動またはAPI経由でCRMに反映させる運用が必要です。
Breeze Customer Agentがナレッジベースやサイト情報をもとに24時間対応。テキスト・音声の両方に対応し、商談予約やCRMレコード更新まで自動実行します。Knowledge Base Agentとの連携で、未対応パターンからナレッジ記事の自動生成も可能です。
Prospecting Agentが商談データ・ウェブ行動・外部ニュースを横断リサーチし、パーソナライズドアウトリーチを自動生成。AI Forecastingが成約確率を予測し、パイプラインリスクをリアルタイム可視化。C-level採用やM&A活動など5つのバイヤーインテントシグナルも検出可能です。
Content Agentがブログ・LP・SNS投稿のドラフトを生成し、Content Remixで別チャネル向けに自動変換。ただし長文コンテンツの品質は最新LLMに及ばないため、下書きはClaude/ChatGPTで作成→Breezeで最適化・配信が効果的です。
ここまでBreezeの強みとユースケースを紹介してきましたが、補足として、導入検討時に把握しておきたいポイントを整理します。
Breezeは「マルチLLM構成」を採用しており、タスクに応じて最適なモデルを自動選択するアーキテクチャです。しかし、実際に使われているモデルのバージョンを確認すると、見落とせない事実が浮かび上がります。HubSpotのAI Trust Center(trust.hubspot.com/ai)で公開されている2026年3月時点の情報は以下の通りです。
| Breeze製品 | 使用モデル | 最新世代との比較 |
|---|---|---|
| Breeze Agents(コア) | GPT-4.1, GPT-4.1 mini, GPT-4o | 最新はGPT-5.4 |
| Breeze Assistant | GPT-4o, GPT-4o Mini | 最新はGPT-5.4 |
| AI Features | GPT-4.1, Claude 3.5 Sonnet, SD3 Large | 最新はClaude Opus 4.6 |
| Marketplace Agents | GPT-5(2026年1月〜) | 移行済み |
日常的に最も使用頻度の高いコアエージェント(Customer / Prospecting / Data / Content)とBreeze Assistantは、依然としてGPT-4.x世代で動作しています。2026年3月現在の最新モデルであるChatGPT 5.4やClaude Opus 4.6は使われていません。
テキスト生成の品質・推論能力・コード生成力など「AIの賢さ」に直結する部分では、最新LLMを直接使う方が明確に高品質な結果を得られます。
これにはビジネス上の合理的な理由があります。
まず安定性の確保。CRM業務は顧客データを扱うため、モデル更新による挙動変化はリスクです。十分にテスト・チューニングされたモデルを使う方が、業務プロセスの安定性を担保できます。
次にコスト効率。最新モデルのAPI利用料は高額です。数十万社のユーザーにAI機能を提供するHubSpotとしては、「十分に高性能かつコスト効率の良い」モデルを選択するのは合理的判断です。
さらにプロンプト最適化の問題。各機能は特定モデル向けに細かくチューニングされたプロンプトで動いており、モデル変更にはこの最適化のやり直しが必要です。
これらは妥当な理由ですが、結果として「マルチLLM」=「最新・最強のAI」ではないという点は、導入検討時に正しく理解しておくべきです。Breezeの価値は「AIの賢さ」ではなく「CRM業務を完結させる実行力」にある——この切り分けが重要です。
HubSpot Breezeと汎用LLMは、そもそも解決する課題が異なります。「マルチLLM=最新・最強」ではありません。
HubSpotの画面内でCRM業務を自動化したい → Breeze(画面を離れずに24時間自律実行)
最新AIの推論力でCRMを操作したい → Claude Code / ChatGPT + HubSpot MCP(最新モデルをフル活用)
深い推論・複雑な分析・長文生成 → Claude Opus 4.6を直接利用
最適解 → 業務内容に応じて、Breeze・MCP・直接LLM利用を使い分けるハイブリッド運用
AIツールは「どれが最強か」ではなく「どう組み合わせるか」の時代。Breezeの強みはAIの賢さではなく、CRMの「手足」として業務を完結させる力にあります。最新LLMの知能とBreezeの実行力を組み合わせることで、はじめてAIの真価が発揮されます。









