


大手IT企業、Sansan、HubSpot Japanを経て2024年に株式会社UniteXを創業。数百社のCRM導入・業務設計を経験する中で「ツール導入だけでは組織は変わらない」という課題に直面し、AI×業務プロセス最適化サービス「AI Flow」を立ち上げ。業務理解・ビジネス理解・CRM・AIの4軸で、企業の業務プロセスそのものを再設計する支援を行っている。
「この提案書、最新版はどれ?」と毎回チャットで聞いている
辞めた人のフォルダに大事な資料が眠っているらしいが、怖くて触れない
探すより作ったほうが早い気がして、同じような資料を何度も作っている
AI活用のご相談で営業部門の方と話すと、ふたを開ければ悩みの半分は「資料が見つからない」だった——この一年、そんな打ち合わせが何度もありました。提案書、見積書、事例資料。どれも会社の財産のはずなのに、共有フォルダの奥で迷子になっています。
資料は、増えることはあっても自然に減ることはありません。
この記事では、散らかった営業資料を片づけて「探す時間」を消す方法を解説します。鍵になるのは、指示するとフォルダの中身を自分で見て動く「エージェント型」と呼ばれるAIです。ChatGPTの画面に一件ずつ貼り付けて聞くやり方とは、できることの規模がまるで違います。
ただし、AIに丸投げすれば片づくわけではありません。人がルールを決め、AIが実行し、人が確認する。この分担を軸に、散らかる原因から道具の選び方、進め方、散らかりを戻さない運用まで、順を追って見ていきます。
まず、なぜ散らかるのかを整理します。散らかり方は会社ごとに違って見えますが、支援の現場で原因をたどると、ほぼ次の3つに行き着きます。
Aさんは共有フォルダ、Bさんは自分のドライブ、Cさんはチャットに添付したまま。資料の持ち方が、会社の決まりではなく個人の流儀に任されている状態です。
この状態が一番こたえるのは、人が辞めたときです。本人にしか分からない分け方のフォルダだけが残り、大事な事例資料ごと行方不明になります。「あの資料、たしか〇〇さんが持っていたはず」で止まる仕事、心当たりはないでしょうか。
同じ提案書が、共有フォルダと個人のドライブとチャットに一部ずつ。どれかが更新されると、残りは古いまま生き続けます。どこにあるのが正式版なのか、誰にも決められていないので、探す側は全部の場所を見て回るしかありません。
置き場所までは決まっていても、その中が無法地帯という会社も多いです。階層の切り方も名前の付け方も人それぞれ。「提案書_final」「提案書_final2」「提案書_final_修正版」が並び、新しい資料はとりあえず空いた場所に置かれていきます。目当てのフォルダにたどり着いても、そこから先で迷子になります。
そして3つの要因が重なった先に、一番大きな損失が待っています。探して見つからないと、人は作るのです。実は隣の部署に同じ業界向けの提案書があったのに、半日かけて一から作り直す。この「見えない作り直し」が、散らかりの本当の代償です。
ポイント:3つの要因はつながっています。管理が個人任せだから置き場所が割れ、置き場所が割れるからフォルダの中も荒れる。どれか一つを直すのではなく、三つまとめて仕組みで受け止める必要があります。
「今度こそ整理しよう」と決めて、フォルダの決まりを作り、大掃除をした経験がある方は多いと思います。そして数か月後、元に戻っていたことも。
これは担当者の意志が弱いからではありません。構造的に続かないのです。
理由は3つあります。第一に、整理は誰の本業でもないこと。営業の評価は受注で決まり、フォルダをきれいにしても数字にはなりません。忙しくなれば真っ先に後回しになります。第二に、分類には判断が要ること。「この提案書は業界別に置くべきか、商品別に置くべきか」という判断は意外と重く、一件ずつ人がやると必ず息切れします。第三に、ルールを守るより破るほうが速いこと。急いでいるときに命名の決まりを思い出して従うより、とりあえずデスクトップに保存するほうが早い。この小さな近道の積み重ねが、散らかりの正体です。
つまり人力の整理が失敗するのは、「判断の手間」と「続ける根気」を人に求めすぎるから。ここを肩代わりしてくれる存在が、ようやく現れました。
ChatGPTやClaudeの画面にファイルを一件ずつ貼り付けて、「これは何の資料?」と聞く。この方法でも分類はできます。ただ、営業フォルダのファイルは数百件、数千件あります。一件ずつ運んでいたら、AIを使っているのに人が力尽きます。
そこで使いたいのがエージェント型AIです。エージェントとは「代理人」のこと。指示を受けると、フォルダの中身を自分で見て回り、ファイルを開いて読み、名前を変えたり移動したりという作業まで自分で進めるAIを指します。人がファイルをAIに運ぶのではなく、AIがフォルダに入っていく。この向きの違いが、整理の現実味を大きく変えました。
エージェント型AIが資料整理でできることは、大きく4つです。
ファイル名が「新規資料(2)」でも、中身を開けば「製造業向けの、在庫管理の提案書」だと分かります。エージェント型AIはフォルダ全体を読んで回り、「業界・商材・資料の種類」で分類する案を一気に出せます。人がやると一件数分かかる判断が、数百件まとめて下書きになります。
「日付_種類_相手先」のような決まりを先に伝えれば、中身を読んで「20260415_提案書_製造業A社向け.pptx」といった名前に付け替えられます。一括での付け替えを人がやると丸一日仕事ですが、エージェント型AIなら決まりを一度伝えるだけです。命名ルールが初めて現実に守られるようになります。
名前が違っても中身がほぼ同じファイルを、内容の近さから探し出せます。「この5つはほぼ同じ内容。日付が一番新しいのはこれ」という形で候補を挙げさせ、残すものを人が決める。final地獄の解消は、この分担が一番現実的です。
一度決めたルールと手順は、そのまま繰り返せます。「先月と同じ点検をして」と頼めば、新しく増えたファイルの分類も、置き間違いの検出も、同じ基準でもう一度やってくれます。人力の整理が挫折してきた「続ける」の部分こそ、エージェント型AIの得意分野です。
ここで一つ、正直にお伝えしたいことがあります。
「AIが全部自動でやってくれる」わけではありません。どんな決まりで整理するかを決めるのは人です。そして「これは残す・これは消す」という最終判断も人の仕事として残ります。人がルールを決め、AIが手を動かし、人が結果を確認する。この分担が崩れると、整理そのものが信用できなくなります。逆にこの分担さえ守れば、人の作業は「ゼロから考える」から「案に丸をつける」に変わります。
| 項目 | 人力だけ | ルールだけ決める | ルール+エージェント型AI |
|---|---|---|---|
| 始めるときの手間 | △ とても重い | ○ 軽い | ○ 比較的軽い |
| 分類・命名の負担 | △ 全部人が判断 | △ 全部人が判断 | ◎ AIが実行、人は確認 |
| 続けやすさ | △ 息切れしやすい | △ 形骸化しやすい | ◎ 同じ指示で繰り返せる |
では、具体的にどのエージェント型AIを使えばいいのか。2026年時点で、営業資料の整理に現実的な候補は次の3つです。
Claude Cowork(クロード コワーク)Anthropic(アンソロピック)社が提供するパソコン用のアプリです。一番の特徴は、エンジニアでなくても使えること。フォルダを渡して「この中を資料の種類別に整理して」「名前の付け方を統一して」と日本語で頼めば、中身を確認しながら作業してくれます。営業部門が自分たちで始める最初の一歩には、これが一番向いています。
Claude Code(クロード コード)同じくAnthropic社の、より本格的なエージェントです。ターミナル(文字で指示する黒い画面)で動くため、見た目のとっつきにくさはあります。その分、大量ファイルの一括の名前変更・振り分け・重複検出といった作業を、決めたルールで何度でも繰り返し実行できます。IT担当や情報システム部門と組んで、社内の整理の仕組みとして育てたい会社に向いています。
Codex(コーデックス)OpenAI社のエージェントで、役割はClaude Codeに近い位置づけです。ChatGPTをすでに全社で契約している会社なら、契約をまとめられる分、有力な選択肢になります。
| 項目 | Claude Cowork | Claude Code | Codex |
|---|---|---|---|
| 使いやすさ(現場の方向け) | ◎ 画面から日本語で頼める | △ ターミナル操作が必要 | △ ターミナル操作が必要 |
| できることの幅 | ○ 日常の整理には十分 | ◎ 大量・反復処理に強い | ◎ 大量・反復処理に強い |
| 向いている会社 | まず営業部門だけで試したい | IT担当と組んで仕組み化したい | ChatGPTを契約済みで揃えたい |
選び方はシンプルで構いません。迷ったらClaude Coworkで小さく始める。整理が回り始めて、対象を全社に広げたくなったら、IT担当と一緒にClaude CodeかCodexで仕組みにする。この順番なら失敗しにくいです。逆に「どれが最強か」の比較検討から入ると、選定だけで数か月が過ぎます。道具選びに時間をかけるより、手元のフォルダ一つで試すほうが、答えは早く出ます。
道具が決まると「よし、共有フォルダを全部やるぞ」となりがちですが、ここが一番の落とし穴です。数千件を一度に対象にすると、エージェント型AIは動き続けられても、結果を確認する人のほうが力尽きます。
先に整理すべきは、全体の2割の「よく使う資料」です。
探す時間の大半は、頻繁に使う一部の資料に集中しています。そこから手をつければ、効果が早く出て、続ける気持ちも保てます。おすすめの手順は次の5段階です。
もう一つ、始める前に「資料を探すのに1日どれくらいかかっているか」をメンバーに聞いておいてください。数字が残っていれば、整理後の変化が見え、続ける理由になります。
まとめ:「よく使う2割」から始めて、成功の形を小さく作る。残り8割は書庫に移し、必要になったものだけ順次引き上げれば十分です。
整理は一度きりの掃除ではなく、流れをせき止める堤防づくりです。せっかく片づけても、新しい資料が無秩序に流れ込めば数か月で元に戻ります。堤防として効くルールは、実はとても少なくて済みます。
安全面の注意も添えておきます。社外秘の資料をAIに読ませる際は、入力内容が学習に使われない法人向けの設定・契約になっているかを必ず確認してください。またエージェント型AIはファイルを動かせる分、対象フォルダを毎回はっきり指定し、「削除はしない・移動と改名まで」と指示に含めるのが安心です。範囲を決めて始めれば過度に恐れる必要はありませんが、この二つだけは省略できません。
営業部門が自分たちで試すならClaude Coworkです。画面から日本語で頼めるので、特別な知識が要りません。IT担当や情報システム部門と一緒に進められるなら、最初からClaude CodeやCodexで仕組みにする道もあります。大事なのは道具の銘柄より、「よく使う資料から」「人が最終判断する」という進め方のほうです。
はい、対策があります。法人向けのプランや契約(Team・Enterprise・API利用など)では、入力した内容がAIの学習に使われない扱いが標準です。個人向けのプランでも、設定で学習に使わせないよう選べます。契約しているプランの条件と設定を確認した上で、まずは機密度の低い資料から範囲を決めて始めることをおすすめします。判断に迷う資料は最初の対象から外して構いません。
「全部」を目標にしないことをおすすめします。よく使う2割の資料なら、数週間で目に見える変化が出ます。残りは書庫に移して、必要になったものだけ引き上げれば、実務上は困りません。
今あるフォルダのまま、AIの法人プランだけで始めるなら、月数千円程度の利用料から試せます。整理の仕組みづくりまで外部の支援を受ける場合は、資料の量や対象範囲で大きく変わるため、まず現状を診断してから範囲を決めるのが確実です。
営業資料の散らかりは、だらしなさの問題ではなく、判断と根気を人に求めすぎた仕組みの問題です。フォルダの中を自分で見て動くエージェント型AIが現れたことで、この構図は変えられるようになりました。
探す時間が消えると、営業は本来の仕事——お客様と向き合う時間に戻れます。半日かけた資料の作り直しが一件なくなるだけでも、始める価値は十分にあります。
自社の場合はどこから手をつけるべきか、資料の量や環境を踏まえて具体的に知りたい方は、無料のAI業務診断で現状をお聞かせください。支援の現場で見てきた実例をもとに、無理のない始め方をご提案します。









